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2018.07.15 シカ続々
7月も半分過ぎ、花は入れ替わりながら次々と見頃を迎えている。
が、今回はシカの話。

今春、早池峰山域にニホンジカの侵入を防ぐ手立ては全く取られなかったために、5月から続々とシカが侵入していることはすでに書いた。
(ほしがらす通信・春はシカとともに参照)

それでも岩手県自然保護課のはたらきで自動カメラが増設されることになり、早池峰シカ監視員のハンターさんがあちこちにカメラを仕掛け、今までよりもシカの侵入の証拠が残るようになった。(写真提供・シカ監視員さん)



閉鎖中の河原坊コース、通称「御神坂(おみさか)」1420m付近、6月8日。



明らかに地面の草を食べている。



そこにあったのは、オオバギボウシ。6月15日に確認。
この場所では数年前からオオバギボウシに食痕が見られたが、今回ニホンジカによるものと確認できた。

この付近で私は昨年、早池峰山固有種のミヤマヤマブキショウマにも食痕を確認していた。そのためシカ監視員さんにこの場所へのセンサーカメラの設置を頼んだのである。



その後もシカの姿が写っている。6月23日。若いオスとみられる。



6月30日。こちらは立派な袋角を持ったオス。

さて、御神坂から少し下った1400m付近、通称「頭垢離(こうべごり)」から尾根に上がった地点。ここでは昨年、やはり早池峰山固有種のナンブトウウチソウに食痕が認められた。
そこにもカメラを置いてもらった。



6月10日。左端にちらりと写っている。コブのようなツノが見えるのでオス。



6月26日。若いオス。君がまたいでるナンブトウウチソウ、まさに去年食われてた株だよ!

ハンターさんによると、まず先遣隊として若いオスが侵入し、その後メスが群れをなして入って来るという。
今年、私は5月6日にはこの場所の東対岸でメスか若いオス(ツノが確認できなかった)の姿を、やや下った1250m付近ではメスの警戒声を確認した。(ほしがらす通信・春はシカとともに

一方、小田越コースでも樹林帯内で食痕は目立っている。



6月7日には標高1500m付近に設置されたカメラに複数のメスが写った。


というわけで、まあ、去年までの結果から予想されていたことがそのまま、というか予想を超える現実になっているのですが、今のところ人間がしたことといえば、カメラで証拠を取っただけです。

昨年から私などはシカの捕獲には限界があるから早く柵をしてくれと申し上げてきたが、これまでのところ完全に出遅れている。
金と権限を持つはずの岩手県自然保護課と東北森林管理局ではついに柵の設置に動き出した。県ではこれから先進地である南アルプスに視察に行くとか。

夏終わるよ…


私は、一昨年、昨年とシカによって被食されたために花が咲かなくなったばかりか株も無くなりそうなマルバキンレイカの群落に、6月になってやっと柵を設置した。ほっといても誰もやってくれそうにないから。






この場所には今年も度々シカが現れていた。通り道なのだ。(5月12日)



柵を設置したその日の夕方には早池峰生まれらしいバンビちゃんが柵のそばに写っていた。(6月21日)

しかしその後、シカはあまりカメラに写らなくなった。ハンターさんによると、シカは人間の痕跡を警戒するのだという。だとすれば柵の効果はあったのだ。



柵の中のマルバキンレイカも今のところ無事だ。このまま回復してくれることを願う。

こんなことは本当は去年やればよかったのである。この柵にいくらかけたと思いますか?ダイソーで集めた材料は総額税込864円、それに事務所にあったビニールひも。合計1000円にもなりゃしない。
私たちは本当にボンクラで怠惰だ。昼間はあれこれ観察したり懸念したりしていても山を降りれば家で飯を食ってくつろいで、シカのことなど忘れて寝てしまうんだ。

シカは24時間早池峰の森の中にいて、彼らに必要な草を食ってる。それだけの話だ。


今月末に、自然保護課と森林管理局は柵の設置場所を考えるため視察に来るらしい。





2018.07.03 今見られる花
今年、早池峰の花はおおむね開花が早く、ハヤチネウスユキソウも見頃を迎えています。





ところで、私たちがきれいだと思うハヤチネウスユキソウは、本当の花の部分はまだ開花していないことが多いのです。
ハヤチネウスユキソウの花びらのような部分は総苞片と言い、本当の花はその内側の丸い部分です。
この頭花が十分に開いた時には、総苞片は反り返って植物全体はなんとなく盛りを過ぎたように見えます。


こちらは小田越コースで今年一番早かったハヤチネウスユキソウ。真ん中の頭花が開き始めたところです。(6/11)


こちらが同じ花の約20日後の姿。まわりの頭花がすべて開花しています。(6/30)

それでは、他の花も御覧ください。(写真は全て6/30)


ホソバツメクサも咲き始めました。


ミヤマオダマキは、開く前が紫がとても濃い。


花火のようなホソバイワベンケイ


頂上直下に、たった一株遅く咲いたヒメコザクラを見つけた人はラッキー。


ウコンウツギ


チシマゼキショウ


早池峰山固有種の、奇跡のツーショット。


2018年6月30日に小田越コースで見られた花
サラサドウダン マルバシモツケ ミヤマオダマキ キンロバイ キバナノコマノツメ ハヤチネウスユキソウ ミヤマヤマブキショウマ ナンブトラノオ ミヤマアズマギク ミヤマシオガマ ホソバツメクサ カトウハコベ チシマフウロ ミネヤナギ ミヤマキンバイ ナンブイヌナズナ ホソバイワベンケイ ミヤマカラマツ ハクサンチドリ ヨツバシオガマ コバイケイソウ コイワカガミ ショウジョウバカマ アオノツガザクラ ミツバオウレン ヒメイワショウブ チシマゼキショウ ムシトリスミレ チングルマ タカネクロスゲ ミネザクラ ウコンウツギ ウラジロナナカマド カラマツソウ
早池峰山小田越コースでいま見られる花(2018/6/17)

ズダヤクシュ ウスバスミレ ミツバオウレン サラサドウダン タカネナナカマド ホソバイワベンケイ ミヤマオダマキ ナンブトラノオ ミヤマアズマギク キバナノコマノツメ ヒロハヘビノボラズ ミヤマヤマブキショウマ ハヤチネウスユキソウ ミヤマシオガマ ヒメシャクナゲ チングルマ イワウメ ミヤマキンバイ ミヤマタネツケバナ ヤマガラシ コイワカガミ チシマアマナ ミネザクラ(九合〜山頂のみ)

今年は花の開花が早く、ハヤチネウスユキソウは山開き(6/10)には咲いていました。
早池峰山の固有種のうち、ハヤチネウスユキソウ・ミヤマヤマブキショウマ・ナンブトラノオがいま見られます。
(写真は6/15〜6/17)


ハヤチネウスユキソウ


キバナノコマノツメ


ミヤマシオガマ


ミヤマアズマギク


ナンブイヌナズナ


チングルマ


イワウメ


コイワカガミ



「月刊ほしがらす通信」になっている。要点のみ取り急ぎ。

〈登山関係〉

・早池峰山に登る場合、今年も河原坊コースは閉鎖・通行禁止なので、登山は小田越コース・門馬/平津戸コース・縦走コースなどに限られる。
・小田越コースを登る場合でも、車は河原坊駐車場に駐車してください。小田越に駐車場はありません。
・早池峰山のお山開きは6月10日(日)。その日から8月5日(日)までの土日祝はマイカー規制があります。

詳しくはこちら>車両規制についてシャトルバス時刻表


〈シカの話〉

シカは思っていたより早く、雪解け前から、じゃんじゃん・どしどし・続々と早池峰山に来ていた。

4月29日、岳〜笠詰(標高550m〜650mあたり)では、県道沿いの雪はとけ、道の脇のアジサイやクロモジの芽、ササに食痕が認められた。


早池峰山のニホンジカは、冬の間は麓に下がっている。春になると、雪解けとともに岳川・県道25号に沿って再び早池峰山域に侵入してくることは間違いない。問題は、それがいつかということである。シカが早池峰のコアな部分に到達する前に、捕獲するなり柵を設置するなり対策を打たなければならないと、昨年から再三、機会があるたびに関係者に訴えてきた。

それが、シカは思っていたよりずっと早く早池峰に入っていたのがわかった。

筆者は 5月6日、まだ河原坊でも日陰に雪が残りヤナギが芽を出した程度の時期に、頭垢離の対岸・標高1360m付近のアオモリトドマツ・ダケカンバ林内でニホンジカ1頭を目撃したのである。その辺りの林床は残雪から所々ササがのぞく状態で、木の芽や草はまだ全く出ていなかった。ツノのないそのシカはこちらに気づくと、林内を南東方向に逃げていった。また、その少し後で、標高1250m付近では雌シカの警戒声を2度聞いた。複数頭がいたということだ。
私はすぐに早池峰シカ監視員のハンターさんに連絡した。そしてハンターさんらは5月8日に早池峰国定公園内で巡視を行なった。

シカを目撃した斜面と逃げた方向 2018.5.6

同5月6日、昨年までにマルバキンレイカがほぼ消滅した標高1100m付近のポイントにカメラを設置すると、5月8日にはシカ2頭が写っていた。



5月12日 地面の草を食んでいる様子。

この場所には、一刻も早く柵を設置してもらいたい。そして去年までに消えたマルバキンレイカが回復するかを見てみたい。
しかし、岩手県自然保護課では今年度、防鹿柵の予算は取っていないのだという。
……え?


5月16日、河原坊のビジターセンターから30mほどの林内で、バイケイソウ(有毒)を食べた跡があった。


駐車場脇の低木もむしゃむしゃ。


一方、河原坊から岳川を4kmほど下った右岸側の林内では、ササがほぼ壊滅状態に。この辺りには雪が少なければ冬もいるのではないか。  2018.5.16

いや、今年、何もしなければ早池峰山は本当にボウズになりますよ。っていう話。

早池峰山シカ監視員のハンターさん達はシカを捉えるセンサーカメラを増やした。シカの通りが確実な所についにわなも仕掛けるという。標高1300mを超える場所は、特別天然記念物「早池峰山高山植物帯」にあたっているため、岩手県が文科省の許可を得て、ようやくこの春から工作物が設置できることになった。県も、何もしていないわけではなかった。
しかし、柵の予算…


さて、ひと月ほど前に、早池峰山でシカの生息密度が上昇しているというニュースが流れ、話題になった。
早池峰山シカ生息密度急上昇 17年度、食害も増加 岩手日報

それは、昨年東北森林管理局が行なった調査結果が発表されたことを受けての報道だった。
その調査結果の概要は、インターネット上に公開されている。
平成29年度 早池峰山周辺地域のニホンジカ生息状況・森林影響等調査

この調査結果について検証してみようと思ったが今回は時間切れ。
まあ要するに、この結果より実際はシカは多いだろうということです。
また次回。


2018.04.28 八森山
少し前に、大迫の外川目にある八森山(757m)に登ってみた。「はちもり」という名の山は全国にあり、その多くには「鉢盛」の字があてられている。丸みを帯びた山を、鉢を逆さにした形状そのままに名付けたものだろう。「八森山」も元々は「鉢盛山」だったのかもしれない。



北側の沢崎集落の林縁部から作業道を辿り尾根に出て、あとは尾根の一番高いところを南東方向に歩いて行くとそれほど苦労なく山頂に着いた。北西側の尾根から山頂にかけては国土地理院の地図には点線で道が記されているが、今はわからなくなっている。ただ松林なので、林内の見通しは比較的きき、予想通り、雪解けから草木が生い茂る前の時期は歩きやすかった。
山頂からの眺望はないが、途中の伐開地からは思いがけず早池峰山と薬師岳が見え喜んだ。


左手前が猫山、右奥に早池峰山、白森山を挟んで薬師岳。 2018.3.31


早池峰


薬師

山頂には三角点だけでなく手製の標識もある。(以下、2018.4.2)


そして、あたり一帯のササはニホンジカによって葉がかなり食べられていた。




尾根上の松林の林床のササも、よく食べられている。




足跡や糞もあったし、個体にも二つ出会った。

岩手県のニホンジカは大船渡市・釜石市・住田町にまたがる五葉山で保護していたものが今や県北部まで広がっているので、花巻市の中では遠野市に接するこの地域にすでに多くのシカが生息しているのは何の不思議もないが、人の通わない山中に痕跡が多いのを見ると改めてげんなりする。大迫では外川目も内川目も最近では田んぼに電気柵を設置するようになっている。

ところで、こんなマイナーな山にも時々登る人がいるらしく、その記録がブログに残っている。
「花巻市 八森山」で検索すると、とりあえず2件の山行記録が出てくる。それは2013年5月と2015年12月の記録なのだが、そこに載っている写真を見ると、2015年12月にして山頂付近で今よりもササが茂っているのがわかる。
つまり八森山頂付近のササが坊主になったのはここ2年のことなのだ。これは、早池峰山南麓での植物の被食増加の時期とだいたい同じ傾向だと言える。

2015年から2017年にかけて何があったのか?
それが分かっても分からなくても、シカはどんどん増え続け、この春も早池峰山に迫ってくるだろう。