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8月に発生したハヤチネウスユキソウ大量首切りの犯人はその後も明らかになっていません。
岩手県では残ったハヤチネウスユキソウの前にセンサーカメラを仕掛けましたが、その後ハヤチネウスユキソウの被害は止まったのです。

去る8月26日に、県が毎年行なっているハヤチネウスユキソウの株数調査が行われました。その時、県南振興局の職員の方がカウンター片手に数えたところでは、頭のないハヤチネウスユキソウは小田越コースだけで500本を数えたそうです。それに私がざっくり数えた河原坊コース・山頂西側の縦走コース・剣ヶ峰方面の稜線上を合わせれば、総数で700本を超えます。登山道から離れたところにもあるとすればもっと増えるでしょう。
このハヤチネウスユキソウの「頭花と苞葉の採取」は、生息地のほぼ全域に及ぶ規模で、そして時間差で繰り返し行われたことを考えると、人間による可能性は極めて低いものと考えられます。

それでは何らかの動物ということになりますが、果たして何か。まず疑われる大型草食哺乳類にシカ(ニホンジカ=ここでは亜種ホンシュウジカ)とニホンカモシカがいます。この2種に関しては、ハヤチネウスユキソウを摂食している瞬間はカメラに写っていないものの、周辺のセンサーカメラには写っています。ただし、今回の事案の原因動物として疑問符がつくのは、同時期にほぼハヤチネウスユキソウのみが失われ、他の植物には目立った食痕が認められなかったことです。シカやカモシカは以前から他の植物を食べています。ハヤチネウスユキソウだけを700本も食べる理由が、今までの観察結果からは推量できません。

今回、被害はまず小田越コース上では三・四・五合目付近で始まり、その後標高の高い七合目・九合目に移りました。その時間差は、私は花の状態の変化にあるのではないかと考えています。
取られた花は、人の目から見て一番美しい時期は過ぎていて、いっぽう種を取るにはまだ少し早い時期のものでした。
ここに、人間原因説を否定するもう一つの根拠があります。花を押し花などにするなら、7月中がよかったでしょう。(その意味で、7/20の一件は、人の可能性が高いとも思われます。)また、種子を採取するなら今頃がちょうどいいはずです。
原因が動物であっても、その動物は今現在の実った種子、ドライフラワーのように乾燥した苞葉にはもう興味がないようです。一体何のためにある時期のハヤチネウスユキソウの頭花と苞葉を集めたのか…
その時期のハヤチネウスユキソウが食料として魅力的だ、と本人に言われればそうかと言うしかありませんが。


今のハヤチネウスユキソウはもう魅力的ではないらしい。 9月4日 小田越コースで


私は、少し前に河原坊コースでの被害を確認した時から、一つの可能性を考えています。

今回、大量のハヤチネウスユキソウに被害が出る一方で、同じウスユキソウ属のミネウスユキソウには被害がありません。初めは時期的にミネウスユキソウの花期がやや遅いせいかとも思いましたが、ミネウスユキソウが、取られた時のハヤチネウスユキソウと同じような時期になっても取られてはいません。
また、私はハヤチネウスユキソウの近くで、同じようにチングルマの頭(この場合種子と萼)が失われた株をいくつも見ました。


種子と萼ごと失われたチングルマ  8月12日 河原坊コース 頭垢離付近で


チングルマの種子(雨に濡れています)


種子が風に乗って飛んだのであれば、このように萼が残るはずです。


ハヤチネウスユキソウにあってミネウスユキソウにないもの。
そしてチングルマの種子にあるもの。

それは綿毛です。

私が考える一つの可能性、それは

犯人はふわふわマニアではないか

ということです。ハヤチネウスユキソウの頭を取っていたのは食べるためではなく、綿毛を何かに利用するためではないのか。何に…?すぐに思いつくのは巣材としてです。
犯人は巣の中にハヤチネウスユキソウやチングルマのふわふわを敷き詰めているのではないでしょうか。


(想像図)

巣作りといえば鳥を思い浮かべるかもしれませんが、早池峰山の高山帯に生息する鳥類は、8月にはもう繁殖期を終えています。鳥は繁殖を終えれば巣を利用しません。
ここで原因動物として推定されるのは、小型哺乳類です。例えばネズミの類であれば、ある年に突然大量に発生することも考えられます。団塊ジュニア?のふわふわマニアに一大マイホームブームが…!今年突然起きたとしても不思議ではありません。
実はハヤチネウスユキソウの頭がなくなる事件は10年前にも起きていて、今年ほど大量ではありませんでしたが、その時は人間による盗採だということになりました。10年というスパンには今のところ意味が見出せませんが、餌の条件などが揃ったのかもしれません。

綿毛に用があるのならばミネウスユキソウはじめ綿毛のない植物には用が無いわけですし、小型動物であれば、河原坊コースで森林管理局が建てた防鹿柵の中にも被害があったことも納得がいきます。シカ柵の網など出入り自由ですからね。
ただ、これは一つの推論でしかありません。ハヤチネウスユキソウを巣穴に溜め込んでいるところを発見しない限りは…

ほかに可能性がある動物としては、やはり以前から様々な植物を食べているノウサギがいます。
いずれにせよ、お好みの時期を過ぎたハヤチネウスユキソウを自動カメラで狙っていても、残念ながらもうやって来ないと思われます。


事件に迷宮入りの雰囲気が漂い始めた中、9月に入り新たに事態が動きました。今度はやはり早池峰山の固有種であるナンブトウウチソウに、花穂が失われたものが出始めたのです。初めの報告はおととい9月3日。翌日さっそく私は確認に登りました。


ナンブトウウチソウ 小田越コース三合目で 9月4日


同 四合目付近で 9月4日 かなりがっつり失われていますね。



ナンブトウウチソウ…これもふわふわじゃないか!しかも甘いいい匂いがする!

…ということは…!



ふわっふわーい (謎)

そんなメルヘンな場合か。
三合目周辺でざっと100本(一本の花茎から分かれた枝それぞれを一本と数えて)、四合目の標柱から五合目手前のお鉢巡り岩までの間でざっと数えて200本ほどのナンブトウウチソウの花穂がなくなっていました。
ハヤチネウスユキソウを700本も坊主にした犯人と、ナンブトウウチソウを襲っている犯人は同一なのか。
ナンブトウウチソウは以前からシカも食べています。
真相は果たして…!?


9月4日の時点では一合目のナンブトウウチソウの大群落はまだ無事です。
今から出来ることは?


ここで、話は少し方向を変えます。

今回のハヤチネウスユキソウの被害に関して、新しい食痕を採取して唾液をDNA鑑定し、原因動物を特定できるのではないかというアイデアが或る機関の方から県に寄せられたそうです。
しかしそれには新しいサンプルが必要で、かじられてから10日以内に検査しないとわからないとのこと。
その話が、現場を歩いている自然公園保護管理員に届いたのは8月30日でした。その時にはもう、ハヤチネウスユキソウの新しい被害は出なくなっていました。
8月に入り次々と発生したハヤチネウスユキソウの頭なし個体。遡って考えると、発生した時期を数日以内に絞ることができたのは、8月7日にはあって15日には無くなっていた五合目手前の株と、14日にはあったのに18日にはなくなっていた九合目手前の群落でした(前回の記事参照)。この時にサンプル採取ができていれば、何か分かったかもしれません。

何が言いたいかというと、刻々と変化する状況を、早池峰山に関係する様々な機関(県・市・森林管理署など)で逐一情報共有できていれば、もっと早い対応が可能だったのではないか?ということです。去年のシーズンの終わりに、シカのこともあり、早池峰山の関係者間でインターネット掲示板なりメーリングリストなりを設置して情報共有を図った方がいいのではないかと会議で提案し(たのは私だけではありません)ていましたが実現していません。三人寄れば文殊の知恵というように、同じ事象についても複数で考えればアイデアも生まれやすいというもの。金と権限はあるが現場を歩いていない皆さんが新しい事態に即応するには何よりも情報収集と共有のスピードが大切です。今回のことを糧に、今後のシカ対策のこともあるので、情報共有の仕組みと何かあった時にすぐに動ける態勢を一日も早く作って欲しいと切に願います。

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