早池峰山の河原の坊コースが土砂崩れのため通行止めになって以来、人の歩かなくなった登山道沿いでニホンジカによる植物の食痕が目立つようになりました。ちょうど草木の芽や葉が伸びる時期に、道の両側のいろいろな草が食べられていました。

7月31日には、早池峰グリーンボランティアの方々が自主研修という形で河原の坊コース下部のシカ食害調査を行うということで、私も同行しました。岩手県立博物館の学芸員の方がいらして植物の同定をして下さいました。河原の坊コース登山口(標高1070m)から頭垢離(1377m)までの間で、61種の植物に食痕が確認されました。ここまで多いことに驚きました。このエリアにはニホンジカだけでなくニホンカモシカも生息しているため食痕だけではどちらかは分かりませんが、ニホンカモシカは以前からいて数も増えていないと思われる一方、ニホンジカはこの5年ほどで急激に侵入・増加し、それに伴うように植物の食痕が増えてきました。そのためこれらの食痕はほとんどがニホンジカのものとみてよいでしょう。


もっとも目立つのはセリ科のオオバセンキュウ(写真)とエゾノヨロイグサでした。


場所によっては裸地化したような状態になってしまっています。


オニシモツケも多く食べられています。


タマガワホトトギスは人間でも茹でて食べるのにいいそうですが。

シカの食痕が多いのは沢沿いの混交林をゆく道です。標高1300mから上、岩が大きくなってくるとやはり歩きづらいのでしょう、食害も目立たなくなってゆきます。


沢の渡渉点にあるシロバナトウウチソウの群落は丸坊主になってしまいました。


こうして繰り返し食べられているうちに絶えてしまうのではないでしょうか。(2016年10月5日)


この調査の日、沢沿いのある場所にキク科のマルバキンレイカが開花していました。


ところが、その4日後に同じ場所に行ってみるとなくなっていました。(2016年8月4日)


茎のあったはずの場所を苦労して探し出すと根元近くからなくなっていました。

それで、今年マルバキンレイカの開花が少ないことに思い至り、毎年咲く群落のある場所を探してみると、ほとんどの株が見事に根元近くからなくなっていました。これもシカに食べられたものと思われました。


2014年8月3日


同じ場所の2016年8月4日


根元近くの切断箇所

それからしばしばこの場所を観察してみましたが、この後もシカは繰り返し訪れては残ったマルバキンレイカやイワガラミを食べていたようでした。


イワガラミの食痕


2016年9月11日


2016年9月11日

登山道から首を伸ばしても届かない位置の株は無事でした。マルバキンレイカはレッドリストに載っているような希少種ではありませんが、早池峰山域ではそれほど多くは観察出来ません。来シーズンはこの場所に雪融けあたりから柵を立てた方がよさそうです。



河原の坊コースシカ食害調査(2016年7月31日)
食痕が確認された植物
ダケカンバ ヨツバヒヨドリ ノコンギク ゴマナ タニウツギ
オニシモツケ オオヒヨドリバナ ブナ ウツボグサ オオヨモギ
タマガワホトトギス ダキバヒメアザミ トリアシショウマ シロヨメナ オオイタドリ
アキノキリンソウ イヌコリヤナギ ナナカマド クロイチゴ クガイソウ
イヌガンソク ヤマカモジ ヨモギ ススキ アマニュウ
オクトリカブト マルバシモツケ オオバクロモジ ゼンマイ ミヤマアキノキリンソウ
イタヤカエデ(アカイタヤ)クジャクシダ オシダ エゾシオガマ エゾアジサイ
ミヤマセンキュウ マルバアオダモ フキ シロバナトウウチソウ ミヤマハンノキ
ホガエリガヤ ハウチワカエデ ウリハダカエデ ソバナ ツルデンダ
ミズナラ ノリウツギ ミソガワソウ ヤマブキショウマ マルバキンレイカ
コヨウラクツツジ ミネカエデ ハナヒリノキ アカミノイヌツゲ チシマザサ
オオカメノキ ハヤチネコウモリ オオバセンキュウ エゾノヨロイグサ センジュガンピ
ヤナギ属

(地表近くのためシカかどうか不明だが食痕のあったもの)
イヌガヤ オオバコ ベニバナイチヤクソウ
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