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年も改まってしまいましたが、2023年シーズンのふり返りをしたいと思います。

①盗掘
盗掘事案については前回と前々回の記事の通り。盗掘の根本的な罪は、各種法律に違反するということではなく、その生き物が自ら選び取った環境で生きることを奪うということに尽きる。

シーズン終了後の関係機関の連絡会議で私は、警察に登山口での抜き打ち手荷物検査を行なって欲しいと要望し、警察署の方からは来年から行いたいという言葉が得られた。
警察による登山口での手荷物検査は、かつて行政や森林管理署、警察との合同パトロール時に行われていた。それで実際に盗掘犯を逮捕することが目的なのではない。警察が時々抜き打ち検査をするということが知られるようになれば、盗掘に対して少しは抑止になるだろう。来シーズンに期待したい。

②クマ
昨年は全国的にクマの出没が多かったことは記憶に新しい。人身被害も多く、岩手県は秋田県に次いで全国で2番目の件数だった。クマの被害はむしろ里山から人里で起きており、登山道が亜高山帯に近いところから始まる早池峰山とは事情が違っている。早池峰山麓の樹林帯ではブナの実が全く実らず、ナラ類のドングリもほぼ見当たらなかった。山にクマの食料がなかったために里に下りて行ったものと思われる。

早池峰山ではどうだったかというと、クマは前からいるし今年も出ていた。ただ、2022年のような人身被害はなかった。
とくに8月中旬の一週間に、小田越コース一合目の西側や八合目付近で、母熊と仔熊2頭の計3頭がしばしば目撃された。
私も小田越コース一合目の西側で一度目撃した。小田越コース二合目を下山中に、一緒に歩いていたハンターでもある管理員氏が肉眼で発見し(流石です)、一合目の登山道から100mほどしか離れていなかったのでその場で様子を見た。親子はハイマツや低木、高山植物が混じった環境で地面近くに鼻先を突っ込んで何かを探しているようだった。時期的にはハイマツの球果の食べごろは過ぎているのでハイマツではないようだったが、遠目には何を食べているのか分からなかった。コケモモか何かだったのかもしれない。
後ろから下りてきたお客さんも止めて、しばし待つ。次第に雨が強くなってきた。クマたちはもちろん、登山道に人がいることには気づいている。ゆっくりと登山道から離れる方向に歩いて姿が見えなくなった。私たちは下山を始めた。
と、一合目の少し上のカーブのところで、西側60mくらいのナンブトウウチソウの群落の中から、ひょいと仔グマが頭を出した。ハンター氏はすかさず大声で威嚇し、追い払った。
お客さんは野生のクマを見られて喜んでいた。


2023年8月18日 小田越コース一合目西側 仔熊2頭


同 母熊


仔熊がひょっこり顔を出した

一昨年のクマによる人身事故のあと、私は登山中にはなるべくヘルメットをかぶるようにしている。転倒時の怪我防止というよりは、クマに襲われた時に頭部を守るためである。クマによる被害の多くは、足を取られて倒された後、頭や顔面をかじられるものだと、知り合いのハンターさんに聞いた。クマスプレーも携行するが、自分が風上にいないと使えない。

③シカ
2022年シーズンのシカの状況もまとめないうちに次のシーズンも過ぎてしまった。
別に新しいことはない。シカは減ることはなく、早池峰山の植物を食べ続けており、今までに植物を食べてしまったところは裸地化に向かっており、食べられる草を求めてシカは生息エリアを拡げている。今年は頂上稜線の「御田植場」にシカが常駐していたことが、センサーカメラの記録からわかっている。
岩手県の対策は今までと同じで、いくばくかの面積をネットで囲って保護すること、シカ監視員やセンサーカメラを配置してシカの動向を記録し、また捕獲することである。森林管理局も植生保護柵の設置と捕獲、植生調査などを行った。(付け加えると環境省は早池峰山のシカ対策としては何もしていない。)
しかし県にしろ国にしろ、対策はまるで不十分と言わざるを得ない。このままでは残念ながら10年後には早池峰山で見られる植物の種数はかなり減っているだろう。


2023年6月21日 早池峰山南面1614m付近 見える範囲に9頭のシカが写っていた。

④早池峰山頂上避難小屋改修工事
早池峰山の頂上にある避難小屋の改修工事が行われた。作業員の方は毎日登山して工事を行い大変だったことだろう。前年に入札不調で工事が進まなかったことを思えば計画が進んでよかったが、工事が終わった小屋を見ると、設計なのか施工なのか分からないが、この仕様はどうなのかな?と思うところもあった。この小屋がどのように使われるのかリサーチ不足なのではと思うような点があったが、使いながら改善されていくのだろう。


改修を終えた早池峰山頂上避難小屋


⑤「早池峰山の花と森」
2023年9月23日〜12月3日に、岩手県立博物館で「早池峰山の花と森」という特集展示が行われた。早池峰山にもよく足を運び、シカ対策にも重要な役割を果たしている植物専門学芸員の方が企画したのである。
その中で特に筆者の目を惹いたものを紹介したい(どうせなら会期中にすべきでした、すみません)。

・大東町天狗岩山産ヒメコザクラの標本
現在、早池峰山でしか見られないために固有種扱いになっているヒメコザクラが、かつて県南の大東町(現一関市)天狗岩山にあったということは前々回の記事に書いたが、その標本が展示されていた。私はヒメコザクラが大東町に産したということを文字では読んでいたが、今回その証拠を初めて見たのである。天狗岩山ではその後盗掘により絶滅してしまったという。希少植物の盗掘の末はこういうことである。

・早池峰山で植物採集をしている牧野富太郎の写真
採集した植物をどっさり抱えて笑顔で写っていた。どっさり採集が今では考えられないし、牧野ならではの歴史的な写真であった。
「画像提供 盛岡てがみ館」となっていたので、興味のある方はそちらで見られるかもしれない。

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シーズン中ほかにも何かあったような気がするが、思い出したらまた記事にしたい。
ひとつ、夏が暑過ぎたせいか紅葉がまったく綺麗でなかったのが特筆すべきことではあった。
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