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2022年も最後の日になって、やっと今年のふりかえりをしたいと思います。今年の「ほしがらす通信」はこれを含めてわずか記事3本。もはや季刊以下です。

山開きの前日に登山者がクマに襲われた衝撃から始まったシーズンでしたが、その後クマによる事故はありませんでした(県道での目撃は何件かありました)。それから日々色々あったのですが、特に記憶に残っていることを拾い出してみたいと思います。

①サンカヨウは早池峰でもう見られない。
7月中旬に早池峰山に来たお客さんがある花を見たいと仰るので何かと思ったらサンカヨウだと言う。サンカヨウ?珍しくもない…早池峰山の固有種でも希産種でもないし。そもそも7月にはもう花は終わっていますよ。と思ったがはて、最近花も実も見てないような。花は終わっても青い実が生っているのを見てもよさそうなものを。
それから早池峰山の小田越コース一合目までの樹林帯や薬師岳の樹林帯を歩くときに探してみたが、ない。おそらくこの数年でシカに食べられてしまったのだろう。サンカヨウが生えているような亜高山帯の森林の林床はシカの食害が広がり極端に植生が単純化している。もう早池峰山域でサンカヨウは見られないのかもしれない。
ほかにも見なくなった植物はいくつかある。シカについてはまた改めて記事にするが、このままではあと10年もすれば早池峰山の貴重な植物はほとんど見られなくなるかもしれない。

②ミネカエデについて
またある日、ミネカエデの研究をしているという方が来られて、ミネカエデの分類が混乱しているのを調べていると言う。それには思い当たることがあった。山で赤く紅葉しているカエデを、地元で基本的な文献となっている『早池峰の植物』(大迫町立山岳博物館編、1983年)で調べると写真はミネカエデしか出てこない。ところが世の中の図鑑(林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年)で調べるとミネカエデは黄色く黄葉するとなっている。
その研究者の方によると、現在広くミネカエデと呼ばれているのものは黄葉するもので、赤く紅葉するのはナンゴクミナカエデということになっているという。あれえ?
「赤く染まるコミネカエデというのもあります」
それは図鑑で見て、確かにそのようなやや小さくて葉先が細長いタイプのカエデもありますが、山の上(高山帯)にはコミネカエデの葉ではないような、赤いものもありますよ。

ミネカエデの学名は Acer tschonoskii 。種小名 tschonoskii は、命名したロシアの植物学者マキシモービチ(マクシモビッチ/マクシモヴィッチ)が標本を採集して送った須川長之助(現在の紫波郡紫波町出身)の名前からつけたものである。マキシモービチが見たその標本を長之助はどこで採集したのだろう。須川長之助は早池峰はもちろん日本の植物学の世界ではつとに知られた存在である。彼は早池峰山のほか日本全国で植物採集をしてロシアにいるマキシモービチに送った。長之助が採集したミネカエデの標本が残っていればそこに地名の記録がないか、そして可能ならDNAを調べて早池峰や他の地域のミネカエデやナンゴクミネカエデと比較すればいいのではないだろうか。


そんなことを考えた今年の秋でしたが、今、大迫にある花巻市総合文化財センターではまさにドンピシャの企画展をやっています。

「早池峰の花を紹介した人々ー早池峰植物研究小史ー」
2022年12月10日(土)〜2023年2月12日(日)
花巻市総合文化財センター 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
12/28〜1/3休館

この展示はすでに見ましたが、その話は年が変わるのでまた来年。


コ?ミネカエデ? 2022/10/6 早池峰山


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