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何年も早池峰山に通っている方は気づいていると思いますが、小田越コースや薬師岳の樹林帯では、ここ数年で林床の植生が著しく変化しています。

小田越登山口から一合目までの30分ほどの樹林帯歩き。
かつてこの登山道の両脇には様々な植物があって目を楽しませてくれました。
いま、それらの多くが目に付かなくなりました。思い出せるだけでも、フキ、ショウジョウバカマ、ミヤマカラマツ、モミジカラマツ、ゴヨウイチゴ、カニコウモリ、数種のセリ科植物…を、今年は見ることができませんでした。
この樹林に夏の間常駐しているニホンジカが数年のうちに食べてしまったからです。
一昨年、このブログでカニコウモリが来年にはなくなると書きましたが、実際になくなりました。


2018/6/11 まだカニコウモリがあります。


2019/8/14 カニコウモリが食害を受けています。フキと同じで、葉は食べずに茎を食べていました。
(2018年の写真の場所はこの写真では奥に写っている場所になります)


同上


2021/9/10 カニコウモリは見当たらなくなりました。(以下、しばらく同日)


よく見ると完全になくなったわけではなく、ごく小さな葉が残っています。


その大きさは一枚がボールペン3分の1ほどの長さしかありません。


こちらはもっとちっぽけです。お話にならない大きさです。これで光合成を?

植物は一度シカに食べられると次からは体を小さくして生えてくるようです。気をつけて地表を見ると、同じように小さくなってしまった植物を見つけることができます。


春にさっぱり花を見なかったショウジョウバカマは小さくなって生き延びていました。


カラマツソウの類かと思われます。


エゾノヨツバムグラです。


イワオトギリ…

いずれもボールペンの先ほどの大きさしかありません。すべてミニチュアみたいになってしまいました。
これでは足元をよく見なければ目につくはずがありません。小さくなっただけではなく姿を消した株も多いことでしょう。


去年、登山道沿いにヒロハテンナンショウというマムシグサの仲間がかたまって花を咲かせました。なかなか見事でした。


2020/7/2


ところが、ほどなくしてシカに食べられてしまいました。 2020/7/24


同上


テンナンショウ属には毒があると言われていますが、平気なのでしょうか。

今年、それらの株は葉を出しましたが、全体に小ぶりになっていました。


2021/06/15

ヒロハテンナンショウは希少種に指定されてはいませんが、また食べられると絶えると思い柵で囲いました。


2021/7/9


2021/9/10 食べられずに済みましたが、結局これ以上大きくはなりませんでした。


現在、小田越の樹林帯(およそ標高1250m〜1400m)の下層植生は、もともと優占種であったササに、他の植物がなくなり目立つようになったイネ科(シカが優先して食べないことと成長点が地表近くにあるため残りやすい)などの中に所々で裸地化した部分が見える状況になっています。


2021/7/2

この状態は年々進行していて、シカがこの樹林にいる限り元に戻ることはないと思われます。
そして今後はだんだんにササも無くなっていくと予想されます。
というのは、山麓の標高の低い地域ではすでにササすら失われているからです。


2021/5/22 県道25号の花巻側、標高650m付近。

この辺りには冬もシカがいてササを食べているので、5月の新緑の季節に林床には緑の草もササもなく真っ茶色という状況になっています。
これが小田越樹林帯の林床の数年後の姿かもしれません。


前回、植生保護柵の効果について書きました。河原坊コースの下部では4年目、小田越コースや薬師岳周辺では3年目になりました。確かに柵の中の植生は保護されるのですが、今年は柵の外との差が顕著に観察できました。4年の間に柵の外側にはかつてあった植物がほとんど見えなくなってしまいました。

今年、岩手県が設置した植生保護柵にシカが絡まって死ぬということが4件起きました。1件は若いオスのツノが、あと3件は仔鹿の首がネットにからまったものでした。
原因はネットの網目の大きさや張り方にも求められますが…ネット自体は4年間同じものを使っているのに、なぜ今年4件も起きたのかということです。

二つの可能性が考えられます。
一つは、柵の外に食べるものが少なくなっているのではないかということです。
つまり、「ネットに首を突っ込んででも食べたい草が柵の中にあった」ということ。
もう一つの可能性はシカの個体数じたいが増えているのではないかということです。
その両方かもしれません。

岩手県や国(森林管理局)のシカ対策が具体的に始まって4年目となります。県、国とも対策として植生保護柵の設置とシカの捕獲を行っていますが、今年の状況を鑑みるに今の対策だけではまだまだ不十分だと言わざるを得ません。
現在行われている植生保護柵の設置は緊急性の高い貴重な植生を部分的に守るという限定的な対策です。
そもそも早池峰山域にシカを侵入させない遮断柵の設置が同時に必要ではないでしょうか。
捕獲に関してはこれまで冬季の越冬地での捕獲が中心でしたが、今年初めて森林管理局により夏季に罠捕獲が実施されました。
これを国でも県でもいいので時間的にも空間的にも拡大し、雪解けの時期から秋まで、さらに多くのシカの生息場所で行うべきでしょう。
どちらにも大変お金がかかります。

おりしも今月は岩手県議会が開かれて来年度の予算の話をしているかと思いますが…

岩手県の令和3年度の早池峰山のシカ対策の予算はいったいどれだけだったのかというと…


岩手県 令和3年度予算関係資料


よく分かりませんでした。シカ・イノシシ対策ということで全県いっしょくたで1億6650万円ということのようです。


ところで、岩手県は ILC(国際リニアコライダー)推進にまだ1億円も予算をとっていますね(令和3年度)。
このような大規模な環境破壊を生む、しかも誘致がほぼ絶望的になったものにいつまで県民の税金をつぎ込むのか、いい加減にやめてもらいたいですね。
岩手県で ILCを推進している人のほとんどは多分、宇宙物理学に興味があるのではなくその過程で発生するお金に興味があるだけです。それと引き換えに本当に地盤が安定しているかどうかも不確実な北上山地に大穴を開けて環境を破壊し(地下水のことを考えていますか?また、掘り出した土はどこの谷を埋めて盛り土しますか?)、稼働中には放射性物質が発生、またその稼働が終わった後には廃墟が残り人は去る。それでいいのですか?
以前、岩手県は「いわて環境王国」などとのたもうていたが、その豊かな自然を目先の金のために一度失えば取り返しはつかないのです。
私は前回の県議会選挙の時、ILCに反対する候補がいないものかと選挙公報を目を皿にして読みましたが誰もいなかったので投票先がなくて困りました。

岩手県はILC予算を全部やめてそのお金で早池峰山をまるっと柵で囲ってください。
そしてシカの捕獲にもっとお金をつぎ込む。
実現しそうもない、実現しても県土を破壊するくだらない夢に税金をつぎ込んで目の前の危機を見過ごしている場合ではありません。
… ILCで税収が増えたら早池峰山にも潤沢な予算が? 間に合わないね。

このままでは早池峰山は本当にハゲ山になります。
世界中でここ早池峰山にしかない貴重な生態系が失われようとしています。
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