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あっというまに11月になってしまいました。

早池峰山は今年も岩手山の初冠雪と同じ10月17日には白くなっていました(気象台から目視できないため初冠雪という記録はなし)。
その後いったん雪は消え、25日からはまとまって雪が付き、27日にはよく晴れて遠くからもよく見えるようになりました。


2020年10月27日

小田越登山口・河原の坊駐車場に通じる県道25号は、11月11日午前11時から来年5月までの冬季通行止めに入ります。
その前に駆け込みで登山を考えている方は、もう駆け込まないで来春をお待ちください。明日から冬型が強まり北日本はだいぶ冷え込みます。

紅葉はもう里でも終わりを迎えようとしています。
今年、山(ここでは早池峰山登山道〜標高1000m付近まで)の紅葉はあまり綺麗ではありませんでした。紅葉の始まりは遅く、まとまりもなかったし、葉には茶色い斑点が入るなど見栄えが悪かったです。ただ、そのあと下の方ではわりあい綺麗になっていきました。
先月ポツリポツリと撮った紅葉を紹介します。


10月9日、小田越から河原坊への県道から。ミネカエデが染まっていてもダケカンバはまだなのでバラバラしています。


10月12日、やはり小田越に近い県道沿いで。ガスってます。


10月13日、うすゆき山荘で。


10月20日、河原坊で。これは紅葉というよりは夕日の色です。


さて…このあとは植物と動物に少しでも興味のある方はお読み下さい。興味のない方には退屈かもしれませんので。
すっかり時間が経ってしまいましたが、前回のナンブトウウチソウの続きです。
9月29日に、一合目でまだ程よく咲いていたナンブトウウチソウの株ですが、10月9日にもう一度確認すると、何割かの花穂が無くなっていました。


9月29日


10月9日、同じ場所。


花茎の先の方で無くなっているものはネズミが原因でしょうか。
ナンブトウウチソウの種子の状態から見ると、やはり花の盛りが少し過ぎて、しかし枯れすぎない時期に種子を食べに来ているようです。

枯れたナンブトウウチソウは種子だけが茎から外れて落ちたり、花穂ごと折れて下に落ちます。

種子が落ちた花穂。


さらに落ちるとこんなになります。


落ちた種子(左)と、花序ごと切れて落ちたもの。

これがナンブトウウチソウにとって通常の種子散布の形でしょう。
ここまで枯れないうちに花穂がなくなったものは、まれに強風によることもありますが、動物(ヒト含む)が原因と思われます。


花茎の中ほどから切れているものはシカかカモシカによるものと思われます。


実際、すぐそばにシカまたはカモシカの足跡がありました。一つは幼獣です。
この夏、小田越コース登山道周辺でカモシカの親子の姿がよく見られました。その親子のものかもしれません。(カモシカの親子は去年も見られ、NHK「さわやか自然百景」に撮影されました)

昨年のナンブトウウチソウの被害について、岩手県立博物館専門学芸員の鈴木まほろさんは、ネズミによるものとの報告をしています。

鈴木まほろ「早池峰山固有種ナンブトウウチソウの花序を食害するネズミ」

その中で、昨年の大規模な食害をハイマツ球果の不作と結びつける仮説を示しています。ネズミがハイマツの実を食べることは他の山で記録があるそうです。

一方、今年はハイマツはそれほど不作ではありませんでしたが、ナンブトウウチソウに一定程度の食痕は認められました。
私は、過去に早池峰山でのネズミに関する研究がないものかと、『平成12年度 早池峰地域自然環境調査報告書』を見てみました。すると、興味深い記述が見つかりました。

「ヒメネズミとアカネズミでは前者が低山帯から高山帯までの鬱閉した森林に生息するのに対し、後者が低山帯の開けた林を好むという。注目されるのは、亜高山帯や高山帯においても、道路工事等で森林を伐採した結果、開けた場所ができるとアカネズミが侵入してくるという事実である。」(時田・横山・向山. 2001. pp.290-291)
そして、
「鬱閉した森林を好むヒメネズミと、低山帯の明るい疎林を好むアカネズミの分布を調べてみると、ヒメネズミは低山帯から亜高山帯にまで広く分布しているが、アカネズミは低山帯を脱し、亜高山帯、特に登山者が多く道路も整備されている小田越コースの森林にまで進出していることが分かった。また、このアカネズミの進出傾向は、近年とみに激しくなっているのではないかということが、約20年前に同地を調査した関山の報告(1982)との比較検討から推察された。」(同、p.292)

(時田克夫・横山恵一・向山満. 6−1 哺乳類. 岩手県生活環境部/社団法人 東北地域環境計画研究会. 平成12年度 早池峰地域自然環境調査報告書. 2001, pp.290-292)

これを読んで私が思ったことは、近年のニホンジカの侵入によって、河原坊や小田越コース登山道の東側の沢などでシカの食害が進み、明るく開けた場所が増え、その結果アカネズミが増えているのではないか?ということです。もしシカの侵入によってアカネズミの個体数が増え、風が吹けば桶屋は儲かり、ナンブトウウチソウの食害が増えたのであれば、シカの侵入が続く限りこの事態は今後も続くのではないでしょうか。
ふわぁーい。誰か調べて下さいな。私にはお金がない。調査にはお金と権威、つまりお金が必要なのです。

先ほど書いたカモシカの出没にしても、ニホンジカの侵入によってカモシカが追いやられ登山道付近での出現と食餌が増えているのカモシれません。
近年の早池峰山での一番大きな環境の変化はニホンジカの侵入です。その影響の可能性については過小評価しない方がいいでしょう。
今年、早池峰山で行われたシカ対策についてはまた改めて記事にしたいと思います。


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