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6月12日(日)、早池峰山で3年ぶりに山開き行事が行われました。2020年、2021年はコロナ禍により中止となっていました。このところコロナ陽性者数が減少していて、岩手県内でも各種催しが再開される方向になってきています。
今年は早池峰山登山口へのシャトルバス運行も再開されました。


早池峰山山頂 2022.6.12

さて、そんな3年ぶりの山開きでしたが、思ったより人出が少なかったです。以前は山開きの日には1日で1000人を超える登山者が集まることも珍しくなかったのですが今回は250人前後でした。
天気予報があまりよくなく、前日には盛岡で大雨の警報が出たこともあったのでしょうか。それとも前日に早池峰山の登山道で登山者がクマに襲われ負傷するという事故があったからでしょうか。

6月11日(土)、午後1時半ごろ?早池峰山小田越コース登山道の四合目と五合目の間で、登山者がクマに襲われ怪我をする事故が起きました。私は自然公園保護管理員業務で午後2時頃小田越登山口にいて第一報を聞き、その後自力で下山してきた被害者の方に会いました。被害者の方は50代男性で、下山時には意識もはっきりとして足取りも確かでしたが、左手首にタオルを巻いて頭の上に掲げて下りてこられ、また右頬と首に止血パッドを貼っていました。
現場で他の登山者が応急手当をしてくれて、119番通報もしたとのことでした。小田越に下山してまもなく救急車が到着し無事搬送されました。

被害者の方から聞いた、クマ遭遇の状況は次のようなものでした。

男性は、奥さんと登山に来ていて下山中だった。奥さんは少し後ろに離れて歩いていたので、奥さんを待ちがてら休憩を取るため登山道上で山(上方)に向かいリュックサックを下ろした。暑いので上着を脱いで丸めて(ザックにしまうために?)屈むと、自分の脇の下、つまり斜面の下の方から黒いものが近づいて来るのが見え、クマだと思った。次の瞬間にはクマはすぐ脇を通り抜けたのでそのまま行くのかと思ったら、上から向かってきた。ザックを押しつけ(るか投げつけるかし)て逃げようとしたが、クマはザックをガリガリっとした後、こちらに襲いかかった。クマはそれほど大きいクマではなかったが仔熊でもなかったようだ。
それから、奥さんや他の登山者が駆けつけた…とのことでした。

顔と首の傷は軽いようでしたが、本人によれば左手首には爪跡があり、止血した後に痺れてきたので一度タオルをほどくと、また出血してきたので再び縛ったとのことでした。病院に搬送された後のことはわかりません。命に別状がなくてよかったです。
襲ったクマがどちらへ行ったのかは聞けませんでしたが、攻撃はそれほど執拗なものではなかったようで幸いでした。

翌日、その現場を確認しました。


男性がクマに襲われた現場 2022.6.12


場所は小田越コース五合目から80mくらい下でしょうか、「お鉢巡り岩」と呼ぶ岩の30mほど下方の地面にはっきりと血痕が残っていてすぐに分かりました。
一帯は蛇紋岩の岩場とハイマツや高山植物の植生からなる環境で、周囲には高い木もなく見通しのよい場所です。被害者の方はザックを下ろして後ろ向きに休んでおり、出会い頭の偶発的な事故ではありません。クマはわざわざ襲ってきたものと思われます。
ただ、その場所は登山道に交差して獣道が走っており、ちょうど交差点のような場所でした。クマはどこから現れなぜ人を襲ったのか。
事故の状況を聞いたハンターさんによると、若いクマが攻撃の練習をしたのではないかということでした。一度通り過ぎて上から襲ったのも、攻撃するときは「上を取る」ということで、クマは襲う時は斜面の上から、逃げるときは下へ逃げるということです。

いずれにせよ、早池峰山登山道でのクマによる人身被害は、少なくともこの60数年間では初めてです。
今までもクマの目撃はありましたが、人が襲われて怪我をしたのは、私が早池峰山で管理員をするようになってからの15年間には聞いたことはありませんでしたし、早池峰に60年以上通うベテランさんに聞いても初めてだということです。
(以前、川井村の管理員さんが剣ヶ峰へ行く途中でクマに出会ったが虫除けスプレーを噴射したら逃げていった、ということがありましたが)

そして、この事案が晴天の午後1時半ごろという明るい時間帯に、しかもこの日の登山者は300人近くを数えており、まあまあ人通りが絶えないような状況での発生であったことが気になります。普通、登山の際のクマ対策としては鈴を鳴らしたりラジオを鳴らしたりして人の存在を知らせるとクマの方で離れていくことに期待するというものですが、今回の件に関してはその対策では予防できないものでした。

私達管理員は翌日の山開きを控え、その日のうちに管轄の役所に連絡しました。山開きの当日には、注意喚起を促す看板を設置したり登山者に注意を呼びかけるなどの対応をしました。猟友会による登山口付近でのパトロールも行われました。

ところで、このようなクマに対しては一体何を注意すればよいのでしょう。とにかく登山中は絶えず周囲に注意して不意打ちを食らわないようにすることでしょうか。クマ鈴はバッタリ遭遇を避けるためにつけたらよいでしょう。しかし人の存在を知りながら出てくる熊に対しては、距離があるうちに気付くために常に周囲に注意を払い、5m以上離れた距離で自分が風上にいる(というかなり限定された状況)の時にはクマスプレー、そして最悪接近されてしまった時のためには…武器を持っていてもよほどの格闘経験がなければとても戦えるとは思えません。せめて頭部に致命傷を負わないためにヘルメットを着用することが必要ではないでしょうか。ヘルメットは早池峰山のような岩山での転倒時にも役立ちます。

まだ始まったばかりの今年の早池峰山の登山シーズン、いきなり気を抜けない状況です。登山される方はどうぞ十分お気をつけ下さい。
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あっというまに11月になってしまいました。

早池峰山は今年も岩手山の初冠雪と同じ10月17日には白くなっていました(気象台から目視できないため初冠雪という記録はなし)。
その後いったん雪は消え、25日からはまとまって雪が付き、27日にはよく晴れて遠くからもよく見えるようになりました。


2020年10月27日

小田越登山口・河原の坊駐車場に通じる県道25号は、11月11日午前11時から来年5月までの冬季通行止めに入ります。
その前に駆け込みで登山を考えている方は、もう駆け込まないで来春をお待ちください。明日から冬型が強まり北日本はだいぶ冷え込みます。

紅葉はもう里でも終わりを迎えようとしています。
今年、山(ここでは早池峰山登山道〜標高1000m付近まで)の紅葉はあまり綺麗ではありませんでした。紅葉の始まりは遅く、まとまりもなかったし、葉には茶色い斑点が入るなど見栄えが悪かったです。ただ、そのあと下の方ではわりあい綺麗になっていきました。
先月ポツリポツリと撮った紅葉を紹介します。


10月9日、小田越から河原坊への県道から。ミネカエデが染まっていてもダケカンバはまだなのでバラバラしています。


10月12日、やはり小田越に近い県道沿いで。ガスってます。


10月13日、うすゆき山荘で。


10月20日、河原坊で。これは紅葉というよりは夕日の色です。


さて…このあとは植物と動物に少しでも興味のある方はお読み下さい。興味のない方には退屈かもしれませんので。
すっかり時間が経ってしまいましたが、前回のナンブトウウチソウの続きです。
9月29日に、一合目でまだ程よく咲いていたナンブトウウチソウの株ですが、10月9日にもう一度確認すると、何割かの花穂が無くなっていました。


9月29日


10月9日、同じ場所。


花茎の先の方で無くなっているものはネズミが原因でしょうか。
ナンブトウウチソウの種子の状態から見ると、やはり花の盛りが少し過ぎて、しかし枯れすぎない時期に種子を食べに来ているようです。

枯れたナンブトウウチソウは種子だけが茎から外れて落ちたり、花穂ごと折れて下に落ちます。

種子が落ちた花穂。


さらに落ちるとこんなになります。


落ちた種子(左)と、花序ごと切れて落ちたもの。

これがナンブトウウチソウにとって通常の種子散布の形でしょう。
ここまで枯れないうちに花穂がなくなったものは、まれに強風によることもありますが、動物(ヒト含む)が原因と思われます。


花茎の中ほどから切れているものはシカかカモシカによるものと思われます。


実際、すぐそばにシカまたはカモシカの足跡がありました。一つは幼獣です。
この夏、小田越コース登山道周辺でカモシカの親子の姿がよく見られました。その親子のものかもしれません。(カモシカの親子は去年も見られ、NHK「さわやか自然百景」に撮影されました)

昨年のナンブトウウチソウの被害について、岩手県立博物館専門学芸員の鈴木まほろさんは、ネズミによるものとの報告をしています。

鈴木まほろ「早池峰山固有種ナンブトウウチソウの花序を食害するネズミ」

その中で、昨年の大規模な食害をハイマツ球果の不作と結びつける仮説を示しています。ネズミがハイマツの実を食べることは他の山で記録があるそうです。

一方、今年はハイマツはそれほど不作ではありませんでしたが、ナンブトウウチソウに一定程度の食痕は認められました。
私は、過去に早池峰山でのネズミに関する研究がないものかと、『平成12年度 早池峰地域自然環境調査報告書』を見てみました。すると、興味深い記述が見つかりました。

「ヒメネズミとアカネズミでは前者が低山帯から高山帯までの鬱閉した森林に生息するのに対し、後者が低山帯の開けた林を好むという。注目されるのは、亜高山帯や高山帯においても、道路工事等で森林を伐採した結果、開けた場所ができるとアカネズミが侵入してくるという事実である。」(時田・横山・向山. 2001. pp.290-291)
そして、
「鬱閉した森林を好むヒメネズミと、低山帯の明るい疎林を好むアカネズミの分布を調べてみると、ヒメネズミは低山帯から亜高山帯にまで広く分布しているが、アカネズミは低山帯を脱し、亜高山帯、特に登山者が多く道路も整備されている小田越コースの森林にまで進出していることが分かった。また、このアカネズミの進出傾向は、近年とみに激しくなっているのではないかということが、約20年前に同地を調査した関山の報告(1982)との比較検討から推察された。」(同、p.292)

(時田克夫・横山恵一・向山満. 6−1 哺乳類. 岩手県生活環境部/社団法人 東北地域環境計画研究会. 平成12年度 早池峰地域自然環境調査報告書. 2001, pp.290-292)

これを読んで私が思ったことは、近年のニホンジカの侵入によって、河原坊や小田越コース登山道の東側の沢などでシカの食害が進み、明るく開けた場所が増え、その結果アカネズミが増えているのではないか?ということです。もしシカの侵入によってアカネズミの個体数が増え、風が吹けば桶屋は儲かり、ナンブトウウチソウの食害が増えたのであれば、シカの侵入が続く限りこの事態は今後も続くのではないでしょうか。
ふわぁーい。誰か調べて下さいな。私にはお金がない。調査にはお金と権威、つまりお金が必要なのです。

先ほど書いたカモシカの出没にしても、ニホンジカの侵入によってカモシカが追いやられ登山道付近での出現と食餌が増えているのカモシれません。
近年の早池峰山での一番大きな環境の変化はニホンジカの侵入です。その影響の可能性については過小評価しない方がいいでしょう。
今年、早池峰山で行われたシカ対策についてはまた改めて記事にしたいと思います。


早池峰山では紅葉が見頃を迎えていますが、そういった情報は昨今みなヤマレコとかYAMAPなどの登山SNSでリアルタイムに得られると思いますのでそちらをどうぞ。

さて前回、今年はナンブトウウチソウにも目立った食害はないと書きましたが、その後状況に変化がありました。

9月29日に小田越コース一合目付近のナンブトウウチソウ群落を観察したところ、去年と同様かやや少ない程度で、ナンブトウウチソウの花が無くなっていました。
(以下、写真は記載のあるもの以外は2020年9月29日、早池峰山小田越コース一合目付近)


何本かの花穂が、花茎の途中から無くなっています。


少し分かりにくいですが、上の写真と同じ株の、9月7日の状態です。











手前左と中央は茎から切断されており、右は種子だけが無くなっています。
つまり…普通は右のように種子だけが落ちて茎は残るはずなのです。

昨年はセンサーカメラにナンブトウウチソウの花茎に登るネズミが写り、有力な犯人像と思われました。

今年は私が観察した限り、9月7日と9月29日の間に花穂が失われたことになりますが、その間のいつ、花(果実)がどんな状態の時に取られたのかが気になります。
未熟な果実の場合と熟した種子の場合では、原因動物にとってもナンブトウウチソウにとっても意味合いが異なると思われるからです。

動物にとって、未熟な実は生食するのに魅力的な食物であり、熟して乾燥した実は貯蔵用になります。
また、ナンブトウウチソウにとっては、未熟なまま食べられれば単なる被害ですが、もし完熟して発芽可能な状態の種子を貯蔵されるのであれば、それは種子散布の一形態と言えます。動物の食べ残しや糞から発芽して子孫を増やすことができるかもしれません。
ただ、見たところナンブトウウチソウは、普通は振動や雨などで自然に種子が落下して散布されるようなので、もともと動物散布を選んでいるようには見えません。原因動物がどの状態の実を取っているのかも明らかになっていません。花の状態を毎日観察してセンサーカメラで24時間監視すればすこしは謎に近づけるでしょうか。

(あれ?去年のふわふわお布団説は…?)



ふわふわ巣材説のためには原因動物と巣を見つけないと…

いずれにせよ、ナンブトウウチソウは多年草で株は残っているので、まだ無くなったりはしません。


昨年、ハヤチネウスユキソウに続いてやはり固有種のナンブトウウチソウの花穂が大量に失われるという事案が発生しました。
ほしがらす通信 2019.9.5 ふわふわマニア?

そしてナンブトウウチソウの前に仕掛けた自動撮影カメラに、ネズミが花穂に食いつく姿が写り、ネズミが原因の一つと考えられました。
ほしがらす通信 2019.10.4 ふわふわのその後

今年はどうなっているでしょうか。ナンブトウウチソウが花期を迎えたので、見に行ってみました。


小田越コース一合目の上のナンブトウウチソウ大群落。


去年はちょうどこのような雄しべのピンクが白く色あせて実がふくらんで来る頃に被害が多く発生しました。
完全に乾く前の実を食べるということは、貯蔵用ではなく生食用だったのでしょうか。


こちらは咲き始めたところ。
ともあれ、今年は目立った被害はないようです。


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さて、お話変わって、8月の後半から小田越の樹林帯ではルリビタキの子育てが見られました。


ルリビタキの巣と卵 2020.8.14

ルリビタキは夏鳥として飛来し、早池峰山の標高1200mあたりから山頂稜線までの樹林で繁殖します。小田越の樹林帯では以前、7月後半にルリビタキの営巣を見たことがありました。今回はやや遅いのでシーズン中の2回目の営巣だったのかもしれません。


数日後には目も開かないヒナが口を開けて親を待つ姿が見られました。 2020.8.21


せっせと餌の昆虫を運ぶお父さん。 2020.8.21


また数日後にはだいぶヒナが育ってきて、今度はむやみに口を開けずにじっとしています。 2020.8.27
5羽はいたようです。


こちらはお母さん。この巣の餌運びの頻度はオスの方がずっと多いようでした。 2020.8.27


それから3日後には、もう巣は空になっていました。 2020.8.30

無事に巣立ったのならよいですが。巣立ち前にテンなど?に襲われる可能性もあります。


これは別の巣から巣立ったとみられるルリビタキの幼鳥です。(このときまだ観察中の巣にはヒナがいたからです) 2020.8.27


空になった巣を後に帰る途中、別のルリビタキが餌運びをしているのに出会いました。オスです。 2020.8.30


オスが餌を運んだ場所で見つけた巣にはヒナが4つ見えました。 2020.8.30


5日後、ヒナはだいぶ育ってきました。 2020.9.4


それから3日後にはもう空になっていました。 2020.9.7

無事に巣立ったかなあ。

二つの例から、ルリビタキの孵化から巣立ちまではだいたい10日〜15日ほどだと観察しました。
センサーカメラなどで24時間監視をしているわけではないので確実ではありません。

早池峰山・薬師岳の森は、わずかに聞こえるメボソムシクイのさえずりのほかは静かになって(ホシガラスはまだいます)、秋の気配を迎えています。
ニホンジカの繁殖コールも始まりました。
さて、早池峰山でハヤチネウスユキソウやナンブトウウチソウの花がなくなる事象はその後どうなったのでしょうか。

実は、残ったハヤチネウスユキソウの株に向けて岩手県立博物館が設置した自動カメラに、ナンブトウウチソウの茎に登るネズミの姿が写っていました。岩手県立博物館の許可を得て世界初公開される画像がこちら。


2019/8/28 小田越コース三合目付近 (岩手県立博物館提供)


2019/8/31 小田越コース三合目付近 (岩手県立博物館提供)

た、確かにナンブトウウチソウにネズミが登っているぅ〜!!

このカメラを設置した県立博物館の学芸員さんが専門家に照会したところ、写っているネズミはアカネズミだそうです。
この後、9月にも同じ場所で複数回写っていたとのこと。

これでナンブトウウチソウの花が無くなる事案に関しては、主犯はアカネズミの線が濃厚になりました。
ただし、ハヤチネウスユキソウを採っている動物はこれまでのところカメラに写っておらず、こちらの原因は依然として分かっていません。

ところで、専門家によるとアカネズミは綿毛を巣に貯める性質はないそうです。
ということは…


ふわふわマニア説が…








9月中旬、岩手県自然保護課は、小田越コース一合目〜三合目の三箇所で、ナンブトウウチソウの食痕サンプルを採取し、国立研究開発法人 森林研究・整備機構(長い…)森林総合研究所の協力でDNA検査をしてもらいました。


2019/9/14 花穂の失われたナンブトウウチソウ 小田越コース三合目 


2019/9/14 ナンブトウウチソウに残された食痕 小田越コース三合目 

結果は、DNAは特定できなかったそうです。理由としては食痕が古かったか、またはシカ・カモシカでなかったことが考えられるとのこと。シカやカモシカは上顎に切歯がなく、上顎の口内の皮膚と下顎の歯でちぎるように噛み切ることから食痕に上顎の組織が残り、その組織からDNAを調べられるとのことでした。ただ食痕が古いと紫外線等によりDNAが破壊されて調べられず、また、ネズミの場合は組織が残らないために食痕からはDNAは調べられないそうです。

その後もナンブトウウチソウは、一合目の群落でも2割ほど(9月20日の時点で)の花穂が失われていました。


2019/9/20 小田越コース一合目で

三合目あたりではどういう状態の花が採られるのかよくわかりませんでしたが、一合目の花を見ると、花期がやや過ぎて実が膨らんできたあたりに無くなっていたようです。ナンブトウウチソウの花は小さな花が密集して穂になっていて、ピンク色の毛のようなものは雄しべです。その花の一つ一つに実がつきます。


10月に入り、河原坊コースの頭垢離(こうべごり)まで行ってみました(河原坊コース登山道は閉鎖中ですが自然公園保護管理員は現況を確認するため巡視しています)。

頭垢離(標高1377m付近)の斜面には東北森林管理局が設置した防鹿柵がありますが、ここにはナンブトウウチソウの群落があります。
ここで、やはり多くのナンブトウウチソウの花穂が失われていました。全体の半数以上でしょうか。


2019/10/3 河原坊コース 頭垢離付近で


同上 (以下も同じ)


後ろに見えているのは東北森林管理局の防鹿柵です。


これは森林管理局の柵の中のナンブトウウチソウです。


そして柵の中でも多くの花が食べられていました。

ということは、やはりナンブトウウチソウを食べているのはネズミでしょうか。柵をわざわざ飛び越えてシカが出入りし、ナンブトウウチソウを食べてるとは考えにくいです。(この柵内を撮っているカメラもありますので、万が一シカが入っていれば写るでしょう。)
一方、シカのネットの網の目をくぐることなどネズミには楽勝でしょう。

ネズミといえば、今年は河原坊のビジターセンターの事務所内でネズミが多く発生し、袋入りラーメンなどをかじっていました。彼らは歩いたところに糞を撒き散らしていきます。もしナンブトウウチソウを食べているのがネズミなら、近くに糞も見つかるはずです。
そう思って探すとやはり落ちていました。


ナンブトウウチソウとネズミの糞(これは柵の中ではありません)


拡大

ただ、ナンブトウウチソウは以前からシカも食べていて(ほしがらす通信2018年8月29日「やっとネットもっとやって」参照)、
食痕によってはネズミではなくシカではないか?と思われるものもありました。


花だけを食べているのではなくもっと下から失われているもの。シカの可能性があります。


これは花だけが無くなっていて、小田越コースで多く見られた食痕と同じ。ネズミによるものと思われます。


というわけでこれまでに分かったことは、

・ナンブトウウチソウの花を採っているのは主にアカネズミなどのネズミで、食料としてらしい。
 (ただし全てネズミの仕業とは言えずシカの可能性もある。)
・ハヤチネウスユキソウの花を採っていたのは何か分からない。
・ふわふわ説は絶望的だ。

ということですね。

まあ、そもそもふわふわマニア、生乾きの花を敷き詰めて快適か?という問題が。




来年もこの事象が起こるのかどうかわかりませんが、対策は複数の原因を想定して立てた方がよいでしょう。もしハヤチネウスユキソウの被害がシカによるものであれば、シカが減らない限りは来年以降も繰り返し被害が発生し、いずれは花が見られなくなります。

早池峰山で今年度行われているシカ対策についてはまた回を改めて報告したいと思います。


10月7日 追記

その後、県立博物館の学芸員さんから、ナンブトウウチソウに仕掛けたセンサーカメラの別の写真から、写ったネズミがアカネズミではなくヒメネズミの可能性もあるとのお知らせを頂きました。

ヒメネズミもアカネズミと同様、平地から高山帯まで生息する野ネズミの一種です。そして手持ちの図鑑を見ると、ヒメネズミは巣に落ち葉を詰め込むという記述が。さらにネットで調べてみると、ヒメネズミもアカネズミも巣に枯れ草や植物を巣材に使っている画像が出てきました。

ということは…ふわふわ説復活か?

fuwafuwa.jpg

ふっわーい!(しつこい)

もしかして、野ネズミは繁殖期を迎えてまずハヤチネウスユキソウの綿毛で巣を整え、その後産まれた仔ネズミに餌を与えるために大量のナンブトウウチソウの実が必要だったのでは…?想像がふくらみふわふわ。
これを証明するにはネズミの巣穴を見つけて調べるか、来年ネズミのために巣箱を設置して観察するなどが必要ですね。


さて、少なくともナンブトウウチソウの被害がネズミによるものらしいと分かり、来年はどういう対策を取ればよいのでしょうか。

一つの考え方は、何も対策しないというものです。というのは、ニホンジカと違い野ネズミは以前から早池峰山に生息する動物で、最近侵入したわけではないからです。何らかの理由(昨年食料が豊富だったなど)により一時的に数が増えたとしても、増え過ぎれば食料が足りなくなり、自然に個体数を減らすことが考えられます。

もう一つの考え方は、自然に任せるよりもう少し積極的に保護するというもの。まとまった群落の一部にネズミも通れないような網をかけて保護してはどうでしょうか。ただし、植物の光合成に必要な日照を妨げないようなものでなければなりませんが。

みんな、どう思う?