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2019.03.30 あと1ヶ月
3月も末になって雪の岩手内陸ですが、あと1ヶ月ほどです。
何が…春が?大型連休が?
シカが早池峰山に上って来るのが。


2019.3.16 内川目・笠詰キャンプ場近く

早池峰山の登山口から西に下ること8kmほどの地点。シカが樹皮を食べた跡です。


県道25号の、今はまだ冬季通行止のゲートの中、笠詰キャンプ場の上側です。


その少し上にまた別の食痕がありました。




林内には足跡も濃く、


糞も多数。これは仔鹿のものでした。

知り合いのハンターさんによると、3月になるとある日突然、樹皮食いが始まるそうです。その理由はよく分かっていません。


ここのササは雪が降る前からボウズでした。


こちらは地面を掘り返しています。周りのササに葉はありません。


キャンプ場の法面のササは、最近食べられたようです。足跡が新しかった。

この春、岳地区つまり鶏頭山麓周辺での樹皮食いや糞・足跡などのシカの痕跡の多さは、今までにないシカの生息密度の濃さを示しています。かつてこの時期にこれほどだったことはありませんでした。
単純に考えれば、それだけシカの数が増えているということになります。

野生生物の個体数を推定することは難しく、必ずしも個体数が増えているとは言えないのでは?という考え方もあるかもしれません。
しかし、増えていないという証拠もなく、ただある事実は、これまで毎年シカの痕跡は増え続けていて、目撃も増え続けていて、あるエリアでいくつかの種類の植物が姿を消しつつある、ということです。そしてそれは今のところ、自然に以前の状態に戻ることはないということです。

この冬、早池峰山麓は雪の少ない冬でした。人にも楽でしたが、シカにとっても。雪の多い冬にはシカの死亡率が上がるという研究がありますが、この冬は生き延びやすい冬だったでしょう。仔鹿の足跡の多さはそれを裏付けているのではないでしょうか。

雪が消えると、いや消えるか消えないかのタイミングで、シカたちは早池峰山に上がってきます。
去年、5月6日に私は早池峰山南面の標高1360m付近でシカを見ました。ダケカンバの林の足元にはまだ雪がある時に。>ほしがらす通信「春はシカとともに」参照
あと1ヶ月というのはそういうことです。

幸い、今年は岩手県と東北森林管理局で、去年以上の規模で高山植物保護のための柵を設ける計画があるようです。
それをシカより早く、食べられては困る植物の周りに立てる必要があります。
残念ながら、優先度の低い植物は今年も姿を消していくでしょう。

私たち人間は生きることに忙しい。自己実現とか、異動とか、昇進、年金、保険、大通りや桜山での歓送迎会…
シカにとって生きることとは?食べて、食べて、食べて、子を成す。それだけです。

勝ち目はありません。

備えを。

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大晦日にワイファイの飛んでいる役場の駐車場からお送りします、ほしがらす通信です。

〜今年のまとめと来年の展望〜

1.河原坊コース登山道について

〈今年のまとめ〉
・2016年以来の通行禁止3シーズン目。経過観察を続行。
・崩落地の状況は昨年とあまり変わらず。
〈来年の展望〉
・通行禁止のまま、経過観察を続けることになるでしょう。専門家の調査が入っていますので
 通行禁止を解除できる科学的な根拠がない限り、河原の坊登山道は再開できないでしょう。
 県自然保護課によると1、2年でどうにかなる状況ではなく、10年単位ではないかとのこと。

2.シカについて

〈今年のまとめ〉
・早池峰国定公園の全域でシカによる植物の被食が増加。山麓の樹林帯では植生が変わりつつある。
 高山植物帯への侵入も進んでいる(以下を参照)。
 ほしがらす通信「春はシカとともに」
 ほしがらす通信「シカ続々」
・岩手県と、東北森林管理局が、試験的に防鹿柵を設置(以下を参照)。
 ほしがらす通信8/29「やっとネットもっとやって」
 ほしがらす通信9/9「柵のあとさき」
〈来年の展望〉
・シカによる植物の被食はますます増加。山麓の樹林帯ではさらに多くの植物が姿を消す。
 それにより消えた植物に依存していた昆虫さらには鳥類などを含む生態系に変化が現れる。
 高山植物帯での食害もいっそう進む。
・岩手県と、東北森林管理局が少なくとも今年と同程度の局所的な防鹿策を設置。

そんな感じです。…来年それでいいのか?っていうのが問題ですが。


以下、シーズン後半の振り返り


11月1日、県自然保護課の設置した防鹿柵を撤去。

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支柱を半分外して、ネットは足元にまとめておきます。このまま雪の下に。

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麓に近い場所はそのままにして様子を見ることに。ここのマルバキンレイカは今年、食われずにすみました。

11月7日、東北森林管理局の柵撤去作業。

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台風にも、ややよろけたけど、倒されることなく持ちこたえた高山植物帯の柵。

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こちらもネットを下ろします。

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支柱は撤去し、ネットは束ねて残置、来春まで様子を見ます。


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8月22日、うすゆき山荘下方、標高930m付近の県道脇。今年はエゾアジサイの被食が目立ちました。来年には姿を消すでしょう。

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10月11日。鶏頭山の南麓に当たる標高660m付近の林内の状況。ササを含め下草が見当たりません。

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9月12日。魚止の滝の下方、標高670m付近の県道沿いの林内に数日間滞在していたメス。

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10月25日。早池峰山の高山帯に隠れた草原があることがわかり、シカ密度の極めて高いシカパラダイスらしいことが推測された。
標高は1560m付近。

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そこでは固有種のナンブトウウチソウに、すでに被食を繰り返され矮化している個体が多く見られた。



…ここからは都会で撮影した画像です。




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いったい、鹿肉バーガー何個分のシカを倒せばいいのか。

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シカの姿を見ない都会ではシカはファンタジーとして魅力的なアイテムです。この市の住宅街でもシカが出ましたが(笑)

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12月26日。岳のゲート近く、標高570m付近で。

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2018.12.26

それではまた来年。

2018.09.09 柵のあとさき
9月4日から5日にかけて、東北森林管理局により早池峰山の南斜面に防鹿柵の設置が行われました。


9月4日。台風21号の接近する中、秋田からお越しの東北森林管理局の方々8名。
まず、標高1270m付近に周囲50mの柵を設置します。支柱はFRP製で、岩手県自然保護課のものより軽いです。


足場の悪い沢沿いの道を進みます。


現場に到着。トンテンカンテン。


案ずるより産むが易し。1時間20分ほどで設置を終えました。皆さんは8月30日に早池峰山の北麓、門馬コース登山道下部でも柵を設置していたので、作業が効率化できていたのかもしれません。


ところで、沢の石の下にトワダカワゲラがいました。水質階級Ⅰ(きれいな水)。

この日、台風の接近にともなって、作業の途中から雨が降り出しました。明日は大丈夫かな。


9月5日。台風は夜半に日本海を北上し去ったものの、朝まで雨が残ったために河原の坊の沢が増水していて渡渉ができず、水が引くまで3時間待ちました。
この日は、秋田からの8人に岩手南部森林管理署遠野支署から8人が加わりました。また、岩手県立博物館の学芸員さんも同行しました。(先日、岩手県の柵設置には地元新聞社が取材に来ましたが、今日は来ませんでした。)
前日より標高の高い1400m付近に、周囲50mの柵を設置します。前回の記事で取り上げた、シカがナンブトウウチソウやミヤマヤマブキショウマなどを食べていた高山植物帯です。去年から柵を設置してほしいと言っていたいわば核心部。


滝のようになった沢沿いの道を進みます。


現場まで、最後の急登を登ります。


到着後さっそく場所を決め、杭を打ちます。これまでの場所よりも土の少ない岩場のため、杭が打ち込めるか心配していましたが、場所を選ぶと入りました。


支柱に沿ってネットを広げていきます。シカの通り道を囲って…


あいつらが入れないように、ずんずんと…


案ずるよりー(以下略)。日本でも数少ない(?未確認ですが)高山帯の岩場での防鹿柵が完成しました。

周囲50mはわずかな範囲ですが、この場所への設置は去年からの念願でした。柵を設置したのは東北森林管理局ですが、ここへの設置を提言できたのは、センサーカメラの画像によって食害をシカによるものと確認できたからです。それは今年、岩手県自然保護課が天然記念物への現状変更の許可を取ってシカ監視員さんがセンサーカメラを設置したからです。様々な関係者の取り組みが柵の設置という一つの結果に結びついたと言ってよいでしょう。これからも、関係者がコミュニケーションを密にし効率よく対策を講じてゆければよいと思います。


さて、私は柵設置の翌日薬師岳へ登りました。


振り返れば早池峰。


もしかして…?

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ゴゴゴ… (ここからは写真をクリックすると少し大きいサイズが開きます)

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あっ

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あった!…なんか、達成感を感じた一瞬だった。

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と同時に、柵に比べてあまりに広大な早池峰山。(赤い点が柵…見えますか?)


今年は早池峰山の歴史上初めて、岩手県と東北森林管理局により防鹿柵が設置されました。来年も、希少植物を保護したり、すでに失われた植生の回復を図るための柵を局所的に設置する取り組みは期待できそうです。しかし早池峰地域全体へのシカの影響度は昨年よりも確実に進んでいます。シカの食害を防ぐためには、局所的な柵だけでなく、シカが早池峰山域へ侵入するのを防ぐ柵が必要だと思います。早池峰山のシカは積雪期には麓へ下がります。春に上らせない対策が必要なのです。ある程度の距離でシカを防ぐ柵が必要でしょう。また、捕獲もこれまで以上に進めなければならないでしょう。
シカ対策に関わる様々な関係者が協力して一つのグランドデザインを描き、それに沿って対策を進めて行くようになればと願っています。
さて、早池峰山に初めてシカの食害を防ぐ柵を設置するため、岩手県自然保護課は7月11日前後に南アルプスに視察に行っていたそうです。

7月22日、現地の状況をよく知る岩手県立博物館の専門学芸員、早池峰シカ監視員、自然公園保護管理員で柵の設置場所を検討。


7月22日。手前はナンブトラノオ。

7月27日、岩手県自然保護課の呼びかけで、東北森林管理局との合同で、シカ柵設置場所の現地検討会が開かれました。合同で出来たことはよかったと思います。現場からは、先だって検討した場所をお勧め(要望)しました。
今年は試験的な意味もあり、閉鎖中の河原坊コースに設置するということに。
県では、標高約1300mより上は天然記念物(早池峰山・薬師岳の高山植物帯)に指定されており、文化庁の許可が必要であるため今年はそれより低い樹林帯に設置を考えたようです。


ああじゃないこうじゃない…


フムフム…

それからほどなくして、県が設置する柵の資材が京都の業者から届いた。南アルプスで使われているものと同じタイプらしい。


結構重そうだな…ボランティアで運べるの?




これも重そう。


…とか言ってる間に、ここでお盆休みに入ります。


8月24日、資材を現場に運ぶ。岩手県自然保護課、県南広域振興局、グリーンボランティア、県立博物館、自然公園保護管理員など、十数名。手分けして登山口よりそれぞれ15分、30分、45分程度の3箇所に運んだ。


皆さん怪我のないように、あまり欲張らない方がいいよ。


うんとこしょ、どっこいしょー

案ずるより産むが易しで、2時間足らずで作業を終えた。


そして8月27日、柵の設置。この日は県自然保護課、県南広域振興局、県立博物館、岩手南部森林管理署遠野支署、早池峰フォーラム、グリーンボランティア、宮古市、自然公園保護管理員からなる総勢22名。


まず一番手前の地点で、京都から来た業者さんに設置の要領を教わります。
この黄色いネットにはステンレスワイヤーが入っていて、簡単には切れないようになっています。それをロープに通してから、金属製の支柱に張り巡らせます。ネットの高さは1.8m。


その後二手に分かれて上の2地点へ移動し、それぞれ設置。設置も案ずるより産むが易し、昼頃には作業終了。
杭が地面に刺さるかどうかが懸案でしたが、何とかなりました。樹林帯だからまだよいのです。岩場の高山植物帯ではこうはいかないだろうところをどうするか。


今回柵を設置した中の、一番上の地点。標高1260m付近。沢の合流点にあるやや平坦な地形で、ダケカンバ林の林床には早池峰山固有種のミヤマヤマブキショウマなどが見られるが、シカの通り道になっており、林床の植物は著しく減少している。周囲約50mを囲った。


第2の地点。標高1180m付近。沢沿いの、ダケカンバなどから成る広葉樹林。ここは5年以上前からシカの通り道になっていて、林床の植物が減少し裸地化が進んでいる。周囲約35m。


登山口から最も近い地点。標高1115m付近。早池峰山ではこの辺りでしか見られないマルバキンレイカ群落の周囲約12mを囲う。
ダイソーきゅうりネットは役目を終え退役。

さて、8月ももう終わりですが、早池峰山初の防鹿柵の設置に至ったことは大変よかったです。
マルバキンレイカは去年、8月30日から9月14日の間にも食われちまいましたから、この時期でもやらないよりずっとよかった。
県には来年以降も柵の設置を続けてもらいたいです。今回の地点は樹林帯で、希少な高山植物の生えるいわば本丸には手付かず。
標高1300m以上の高山植物帯で、ナンブトウウチソウやミヤマヤマブキショウマといった固有種は食べられています。


ぱくぱく…  7月24日、標高1400m付近。(写真:シカ監視員さん提供)


そこにあったのはナンブトウウチソウ。7月27日に確認。


もそもそ…  8月7日。(写真:シカ監視員さん提供)


それはミヤマヤマブキショウマ。8月27日確認。


…ここで、朗報です!

東北森林管理局が9月初旬にこのあたりにシカ柵を設置するという情報が入って来ました!


さすが国!やることが早い!天然記念物もクリアしたんだ…


というわけで、次回、ほしがらす通信を乞うご期待!

2018.07.15 シカ続々
7月も半分過ぎ、花は入れ替わりながら次々と見頃を迎えている。
が、今回はシカの話。

今春、早池峰山域にニホンジカの侵入を防ぐ手立ては全く取られなかったために、5月から続々とシカが侵入していることはすでに書いた。
(ほしがらす通信・春はシカとともに参照)

それでも岩手県自然保護課のはたらきで自動カメラが増設されることになり、早池峰シカ監視員のハンターさんがあちこちにカメラを仕掛け、今までよりもシカの侵入の証拠が残るようになった。(写真提供・シカ監視員さん)



閉鎖中の河原坊コース、通称「御神坂(おみさか)」1420m付近、6月8日。



明らかに地面の草を食べている。



そこにあったのは、オオバギボウシ。6月15日に確認。
この場所では数年前からオオバギボウシに食痕が見られたが、今回ニホンジカによるものと確認できた。

この付近で私は昨年、早池峰山固有種のミヤマヤマブキショウマにも食痕を確認していた。そのためシカ監視員さんにこの場所へのセンサーカメラの設置を頼んだのである。



その後もシカの姿が写っている。6月23日。若いオスとみられる。



6月30日。こちらは立派な袋角を持ったオス。

さて、御神坂から少し下った1400m付近、通称「頭垢離(こうべごり)」から尾根に上がった地点。ここでは昨年、やはり早池峰山固有種のナンブトウウチソウに食痕が認められた。
そこにもカメラを置いてもらった。



6月10日。左端にちらりと写っている。コブのようなツノが見えるのでオス。



6月26日。若いオス。君がまたいでるナンブトウウチソウ、まさに去年食われてた株だよ!

ハンターさんによると、まず先遣隊として若いオスが侵入し、その後メスが群れをなして入って来るという。
今年、私は5月6日にはこの場所の東対岸でメスか若いオス(ツノが確認できなかった)の姿を、やや下った1250m付近ではメスの警戒声を確認した。(ほしがらす通信・春はシカとともに

一方、小田越コースでも樹林帯内で食痕は目立っている。



6月7日には標高1500m付近に設置されたカメラに複数のメスが写った。


というわけで、まあ、去年までの結果から予想されていたことがそのまま、というか予想を超える現実になっているのですが、今のところ人間がしたことといえば、カメラで証拠を取っただけです。

昨年から私などはシカの捕獲には限界があるから早く柵をしてくれと申し上げてきたが、これまでのところ完全に出遅れている。
金と権限を持つはずの岩手県自然保護課と東北森林管理局ではついに柵の設置に動き出した。県ではこれから先進地である南アルプスに視察に行くとか。

夏終わるよ…


私は、一昨年、昨年とシカによって被食されたために花が咲かなくなったばかりか株も無くなりそうなマルバキンレイカの群落に、6月になってやっと柵を設置した。ほっといても誰もやってくれそうにないから。






この場所には今年も度々シカが現れていた。通り道なのだ。(5月12日)



柵を設置したその日の夕方には早池峰生まれらしいバンビちゃんが柵のそばに写っていた。(6月21日)

しかしその後、シカはあまりカメラに写らなくなった。ハンターさんによると、シカは人間の痕跡を警戒するのだという。だとすれば柵の効果はあったのだ。



柵の中のマルバキンレイカも今のところ無事だ。このまま回復してくれることを願う。

こんなことは本当は去年やればよかったのである。この柵にいくらかけたと思いますか?ダイソーで集めた材料は総額税込864円、それに事務所にあったビニールひも。合計1000円にもなりゃしない。
私たちは本当にボンクラで怠惰だ。昼間はあれこれ観察したり懸念したりしていても山を降りれば家で飯を食ってくつろいで、シカのことなど忘れて寝てしまうんだ。

シカは24時間早池峰の森の中にいて、彼らに必要な草を食ってる。それだけの話だ。


今月末に、自然保護課と森林管理局は柵の設置場所を考えるため視察に来るらしい。