FC2ブログ
2019年度シカ柵事業まとめ

だいぶ久しぶりの更新になってしまいました。
早池峰山のシカについて、2019シーズンのまとめをしようと思っていたのですが、一度にいろいろ書こうとして結局書けず何ヶ月も経ってしまいました。とりあえず私が見た範囲のこと、岩手県自然保護課(県)と東北森林管理局(国)が早池峰山の南側と薬師岳で行った防鹿柵設置だけに絞って記事にします。
(県も森林管理局も、早池峰山のシカ対策としては今のところ防鹿柵設置と捕獲という二本立てになっていて、またそのための生態調査も行われています。)
防鹿柵の設置は2018年から始まり、今年度が2年目でした。ここではそれだけを簡単に振り返ります。

2019年に先立って、2018年のおさらいをすると2018年は
・岩手県自然保護課→試験的に樹林帯に3箇所で合計100mの植生保護柵を設置。そのうち2箇所は冬になる前にネットだけ下ろす。1箇所は張りっぱなしに。
・東北森林管理局→4箇所に合計200mの植生保護柵を設置。冬季は支柱とネットを撤去。

(2018年の様子は、ほしがらす通信>カテゴリ>シカ で過去記事に見ることができます。)

2019年はこれら前年に設置したネットを拡張したり、新たに追加した、ということになります。

2018年は岩手県、森林管理局とも設置時期がかなり遅く、その効果は限定的なものでした。
そこで2019年は雪解けと同時に柵が設置されることを望んでいましたが、何かわからない様々な事情があったらしく、結局シカの侵入と植物の成長が進んでからとなりました。
ここでは早池峰山南面の柵に限って見てみたいと思います。

6月26日 東北森林管理局岩手南部森林管理署遠野支署、頭垢離に柵を拡張設置。50m→150m
(遠野支署はもう一箇所50m、2018年に設置した柵を2019年も再設置しています)

190812_kobekori.jpg
2019年8月12日撮影

河原の坊コースで最も標高が低い高山植物群落を大きく囲うことができました。ただしもう少し早く設置できればよかったです。ここは早池峰山で最も早く花が開く群落なのです。また、期間中に一部ネットに緩みや隙間が見られました。

190609_kobekori.jpg
6月9日には下ろしたままのネットの内側にシカが来ていました。

190812_8.jpg
8月12日 ネットにやや緩みや隙間ができていました。設置後も時々メンテナンスが必要ということですね。


7月11日 東北森林管理局三陸北部森林管理署、小田越コース東側草原に150mの柵を設置。

この草原は2018年秋に岩手県立博物館の植物専門学芸員によって発見されました。その時すでにシカの糞や足跡、食痕など痕跡が濃く、植物の矮化も見られました。高山帯にありながら登山道からは見えないためシカの生息密度が高いことが推測され、ここを囲うことは今年度の核心事業のはずでした。が、柵の量が足りなかったのか草原全体を閉じて囲われなかったため、柵設置後もシカが高密度で侵入するという残念な結果になりました。

190714_sougen.jpg
柵設置後の7月14日にも多くのシカが来ていた。写真提供:岩手県立博物館・鈴木まほろ氏

190714sougen2.jpg
同上 7月14日でもまだ袋角なんですね。

190814_sougen_net2.jpg
柵の脇に隙間が。2019年8月14日

190814_sougen_net.jpg
というか、途中までしかないんですよね。 2019年8月14日

190814_sougen_fun2.jpg
糞も普通に落ちていました。 2019年8月14日

190814_sougen_nmbtouuchi3.jpg
繰り返し食べられて小さくなったナンブトウウチソウ(早池峰山固有種)。2019年8月14日

7月21日 岩手県自然保護課、河原坊コースに昨年設置した柵のネットを張る。

シーズンの当初(5月〜)、県は前年度に設置した三箇所計100mのうちの二箇所は柵を撤去して別の場所に移動することにしていたため、支柱だけが立った状態でしばらくネットを張りませんでした。しかしその後方針が変わり前年度の柵を再び使うことになり、7月21日になりネットを張りました。その時にはシカの食害はかなり進んでいました。また、張り方が緩く、張った後もシカがネット越しに植物を食べているところが自動撮影カメラに写っていました。
この県の柵の一箇所のすぐ隣には森林管理局が設置した柵があり、そちらは6月にネットを張ったため、後日、柵の中の被食度合いの違いがよく分かりましたね。

7月22日 岩手県自然保護課 小田越コース樹林帯・二合目東側・薬師岳登山道に新たに柵を設置。合計300m。

190722_network_odagoe.jpg
小田越樹林帯での柵設置作業。主にオサバグサの群落を保護します。
作業は岩手県職員、グリーンボランティア、自然公園保護管理員などで行ないました。

190722_odagoe.jpg
完成したところ。

190722_network1.jpg
続いて二合目へ。

190722_network_2goume.jpg
柵を設置しました。ここにはナンブトウウチソウなどが生育しています。

190926_yakushinet.jpg
薬師岳樹林帯の柵。ここもオサバグサが主対象です。

2019年、岩手県自然保護課が初めて予算をとって防鹿柵を設置したことは評価できます (2018年の岩手県による防鹿柵設置はお茶の伊藤園の寄付で柵を購入したものでした)。しかしやはり設置時期が遅すぎました。シカは5月2日には早池峰山の小田越樹林帯で目撃され、二合目東側地点の雪は6月2日には完全になくなっていました。7月22日までにのべ何頭のシカがここに侵入したでしょう。

ちなみに、岩手県が2018年に設置しそのまま撤去せずに冬を越した一箇所の柵。2019年もそのまま設置を続けました。
ここではオミナエシ科のマルバキンレイカがシカの食害を受け2016年にはすっかり咲かなくなっていたのですが、2018年から柵を設置し続けたところ、2019年には一株が開花し、種を実らせました。柵の効果があったのです。いっぽう柵の外では引き続きシカの食害が続いています。

190611_mk.jpg
6月11日には仔鹿が写っていました。

marukin_190812f.jpg
8月12日には4年ぶりにマルバキンレイカ一株が開花。

190826_mk2.jpg
8月26日にもシカが来ていましたが、マルバキンレイカには届きません。

marukin_190830seed.jpg
そして結実。よかった。しかしまだ花の咲かない株もあるのです。2019年8月30日


防鹿柵は、積雪期の損傷を避けるため、ネットを下ろすか、支柱も外す形で撤去されました。
10月23日 三陸北部森林管理署 防鹿柵撤去
10月23日 自然保護課 防鹿柵撤去(一箇所を除く)
10月31日 岩手南部森林管理署 防鹿柵撤去

今年はぜひ雪解けと同時に再設置をして欲しいものです。

さて、県と国の事業にあれこれとケチをつけてきましたが、それはこれらの事業が税金で行われているからです。せっかく岩手県、日本、そして世界の宝である早池峰山のシカ対策を県民・国民の税金でやるからには効果的に行われなければなりません。

記事のはじめにも書きましたが、早池峰山のシカ対策事業はこの柵だけではありません。調査や捕獲も行なわれています。
広く一般に周知されているとは言えませんが、事業の概要は、岩手県のウェブサイトで見ることができます。早池峰地域保全対策事業推進協議会の会議資料として公開されているものです。興味のある方はご覧ください。

早池峰地域保全対策事業推進協議会H30会議資料
(シカ対策については25ページから50ページまで)

早池峰地域保全対策推進協議会・平成23年以降の会議録と結果

この協議会は毎年1回開かれていて、今年度の協議会は3月10日(火)。今年度に行われた早池峰山での保全対策がシカに限らず報告されます。話し合うのは委員ですが、傍聴は可能です。直前になってしまいましたが、興味のある方は聞きに行ってみてはいかがでしょうか。
早池峰地域保全対策事業推進協議会

協議会では2020年の保全対策事業についても話し合われることと思います。
シカについて言えば、昨シーズンは侵入頭数が大幅に増加している感じはなかったのですが、前年にある種の植物を食べ尽くしたら今年はまた別の…というように段々に麓で見られる植物の種数が減ってきています。
このあたりのことは、データとともに報告されることと思います。

190814_kanikoumori3.jpg
2019年の小田越樹林帯でのトレンドはカニコウモリでした。今年は姿を消すでしょう。

そして8月〜9月に発生したハヤチネウスユキソウとナンブトウウチソウの大量喪失事件。
原因は分かっていませんが今年どうなるのか、出来るだけ対策は講じておかなければならないと思います。
つまり、
①シカを防ぐような柵で囲う
②ネズミも防げる柵で囲う
③何もしない
の三通りの場所を設けてそれぞれにセンサーカメラで監視。
といった具合に。

協議会でそういう話すんのかなー?
スポンサーサイト



里では雪の少ない冬でしたが、春先にどかどか降った雪が山ではとけずに、結果としてこの春の早池峰山は例年より残雪が多いようです。


5月5日 小田越コース九合目より山頂方向


同 山頂直下から東方向。宮古湾はもちろん、この日は360度大展望、岩木山や八甲田までも見えました。


同 小田越コース登山口から一合目までの樹林帯

5月10日には県道25号のゲートも開き、河原の坊に駐車して登山できるようになっていますが、小田越コース一合目までの樹林帯と、九合目から山頂までにはまだ残雪があります。アイゼンやピッケルなどは必要ありませんが、雪上歩行に自身のない方は6月第2日曜の山開きまで待った方がいいでしょう。まだ花も咲いていません。
河原坊コースは今年も通行禁止が続いていますので、他の登山コースを利用することになります。


そういえば二合目の手前の岩場にカモシカが休んでいた。
いいなあ、大きくなったらカモシカになりたい。


なに?

カモシカは以前から早池峰山に生息していて、急に個体数が増えたりもしない生態なので早池峰山の環境にとって脅威ではありません。


小田越に下りてきたらホシガラスもいた。


* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

さて、シカ。

5月1日
河原坊の登山口付近でシカの警戒声を聞きました。

5月2日
河原坊の登山口からすぐの登山道上でシカ1頭を目撃しました。
(河原坊登山道は閉鎖中ですが、管理のために入っています)


シカは右手から左方向に跳ね飛んで逃げ、あっという間に川を渡り対岸の斜面を駆け上った。
私は後を追って、写真を撮った!


…手にしていたスマホで。そういう時に限ってちゃんとしたカメラを持っていないものです。


でも写ってるんだ!


雪の上には、その日のものと見られる成獣2頭、子鹿1頭分の足跡が残っていました。
この日、小田越コース一合目付近で登山者がシカ2頭を目撃したそうです。
まだまだ雪が残るのにシカの出足は早いです。

この日私は、昨年岩手県自然保護課が設置した防鹿柵をチェックしに行くところでした。

昨シーズンの終了時の状況は↓
ほしがらす通信 2018.12.31 「今年のまとめと来年の展望」


5月2日 一番登山口に近い標高1115m付近。そのまま残した柵は、冬の積雪を乗り越え、ネットや張り綱の緩みもほとんどなく立っていました。ここでも積雪は1.5mはあったと思われます。
この日は天気が悪くここまでで引き返しました。


5月12日

今度は、河原坊コースの標高1400mまでの間に、昨年岩手県が設置した残りの2箇所と、東北森林管理局が設置した2箇所の防鹿柵を全て見てきました。


岩手県の柵 標高1180m付近


岩手県の柵 標高1260m付近


東北森林管理局の柵 標高1270m付近


東北森林管理局の柵 標高1400m付近


同上

これらは、支柱からネットを外してその場におろして残置してあったものです。
結果として、全て流されることもなく、置いたままになっていました。支柱を立てたまま残したところでは根元にやや緩みも見られましたが、倒れたものはありませんでした。今年の防鹿柵設置に向けた良いデータとなるでしょう。

5月2日にチェックした柵の前にカメラを仕掛けて置いたので画像をチェックすると、5月10日に子どもっぽいシカが2頭写っていました(頭から首のあたり毛の様子が違うので別個体と思われます)。




柵があるので、手も足も出ないだろう。はっはっは。


まあ、そうなればつまり、柵の外のものを食べるだけだよね。柵の中のものは食われない。
(柵の手前にあった草)

局所的に柵で保護するということは、そういうことです。
保護するものに優先順位をつけて、それ以外は見捨てる。世界中で早池峰山にしかない植物が食べられてなくなったら取り返しがつかないから。今年は高山帯にもっと柵が拡大されることになっています。

しかし、柵の外の植物が食い尽くされたら…?
その植物に依存していた昆虫がいなくなり、その昆虫に依存していた鳥類や哺乳類もいなくなります。生態系そのものが損なわれてしまいます。
早池峰山のシカ対策のゴールはどこに…?


2019.03.30 あと1ヶ月
3月も末になって雪の岩手内陸ですが、あと1ヶ月ほどです。
何が…春が?大型連休が?
シカが早池峰山に上って来るのが。


2019.3.16 内川目・笠詰キャンプ場近く

早池峰山の登山口から西に下ること8kmほどの地点。シカが樹皮を食べた跡です。


県道25号の、今はまだ冬季通行止のゲートの中、笠詰キャンプ場の上側です。


その少し上にまた別の食痕がありました。




林内には足跡も濃く、


糞も多数。これは仔鹿のものでした。

知り合いのハンターさんによると、3月になるとある日突然、樹皮食いが始まるそうです。その理由はよく分かっていません。


ここのササは雪が降る前からボウズでした。


こちらは地面を掘り返しています。周りのササに葉はありません。


キャンプ場の法面のササは、最近食べられたようです。足跡が新しかった。

この春、岳地区つまり鶏頭山麓周辺での樹皮食いや糞・足跡などのシカの痕跡の多さは、今までにないシカの生息密度の濃さを示しています。かつてこの時期にこれほどだったことはありませんでした。
単純に考えれば、それだけシカの数が増えているということになります。

野生生物の個体数を推定することは難しく、必ずしも個体数が増えているとは言えないのでは?という考え方もあるかもしれません。
しかし、増えていないという証拠もなく、ただある事実は、これまで毎年シカの痕跡は増え続けていて、目撃も増え続けていて、あるエリアでいくつかの種類の植物が姿を消しつつある、ということです。そしてそれは今のところ、自然に以前の状態に戻ることはないということです。

この冬、早池峰山麓は雪の少ない冬でした。人にも楽でしたが、シカにとっても。雪の多い冬にはシカの死亡率が上がるという研究がありますが、この冬は生き延びやすい冬だったでしょう。仔鹿の足跡の多さはそれを裏付けているのではないでしょうか。

雪が消えると、いや消えるか消えないかのタイミングで、シカたちは早池峰山に上がってきます。
去年、5月6日に私は早池峰山南面の標高1360m付近でシカを見ました。ダケカンバの林の足元にはまだ雪がある時に。>ほしがらす通信「春はシカとともに」参照
あと1ヶ月というのはそういうことです。

幸い、今年は岩手県と東北森林管理局で、去年以上の規模で高山植物保護のための柵を設ける計画があるようです。
それをシカより早く、食べられては困る植物の周りに立てる必要があります。
残念ながら、優先度の低い植物は今年も姿を消していくでしょう。

私たち人間は生きることに忙しい。自己実現とか、異動とか、昇進、年金、保険、大通りや桜山での歓送迎会…
シカにとって生きることとは?食べて、食べて、食べて、子を成す。それだけです。

勝ち目はありません。

備えを。

大晦日にワイファイの飛んでいる役場の駐車場からお送りします、ほしがらす通信です。

〜今年のまとめと来年の展望〜

1.河原坊コース登山道について

〈今年のまとめ〉
・2016年以来の通行禁止3シーズン目。経過観察を続行。
・崩落地の状況は昨年とあまり変わらず。
〈来年の展望〉
・通行禁止のまま、経過観察を続けることになるでしょう。専門家の調査が入っていますので
 通行禁止を解除できる科学的な根拠がない限り、河原の坊登山道は再開できないでしょう。
 県自然保護課によると1、2年でどうにかなる状況ではなく、10年単位ではないかとのこと。

2.シカについて

〈今年のまとめ〉
・早池峰国定公園の全域でシカによる植物の被食が増加。山麓の樹林帯では植生が変わりつつある。
 高山植物帯への侵入も進んでいる(以下を参照)。
 ほしがらす通信「春はシカとともに」
 ほしがらす通信「シカ続々」
・岩手県と、東北森林管理局が、試験的に防鹿柵を設置(以下を参照)。
 ほしがらす通信8/29「やっとネットもっとやって」
 ほしがらす通信9/9「柵のあとさき」
〈来年の展望〉
・シカによる植物の被食はますます増加。山麓の樹林帯ではさらに多くの植物が姿を消す。
 それにより消えた植物に依存していた昆虫さらには鳥類などを含む生態系に変化が現れる。
 高山植物帯での食害もいっそう進む。
・岩手県と、東北森林管理局が少なくとも今年と同程度の局所的な防鹿策を設置。

そんな感じです。…来年それでいいのか?っていうのが問題ですが。


以下、シーズン後半の振り返り


11月1日、県自然保護課の設置した防鹿柵を撤去。

181101_1.jpg

181101_2.jpg
支柱を半分外して、ネットは足元にまとめておきます。このまま雪の下に。

181101_3.jpg
麓に近い場所はそのままにして様子を見ることに。ここのマルバキンレイカは今年、食われずにすみました。

11月7日、東北森林管理局の柵撤去作業。

181107_1.jpg
台風にも、ややよろけたけど、倒されることなく持ちこたえた高山植物帯の柵。

181107_2.jpg
こちらもネットを下ろします。

181107_3.jpg
支柱は撤去し、ネットは束ねて残置、来春まで様子を見ます。


180822.jpg
8月22日、うすゆき山荘下方、標高930m付近の県道脇。今年はエゾアジサイの被食が目立ちました。来年には姿を消すでしょう。

181011.jpg
10月11日。鶏頭山の南麓に当たる標高660m付近の林内の状況。ササを含め下草が見当たりません。

180912.jpg
9月12日。魚止の滝の下方、標高670m付近の県道沿いの林内に数日間滞在していたメス。

181025_1.jpg
10月25日。早池峰山の高山帯に隠れた草原があることがわかり、シカ密度の極めて高いシカパラダイスらしいことが推測された。
標高は1560m付近。

181105.jpg
そこでは固有種のナンブトウウチソウに、すでに被食を繰り返され矮化している個体が多く見られた。



…ここからは都会で撮影した画像です。




deerburger.jpg
いったい、鹿肉バーガー何個分のシカを倒せばいいのか。

lumine.jpg
シカの姿を見ない都会ではシカはファンタジーとして魅力的なアイテムです。この市の住宅街でもシカが出ましたが(笑)

181226.jpg
12月26日。岳のゲート近く、標高570m付近で。

20181226hayachine.jpg
2018.12.26

それではまた来年。

2018.09.09 柵のあとさき
9月4日から5日にかけて、東北森林管理局により早池峰山の南斜面に防鹿柵の設置が行われました。


9月4日。台風21号の接近する中、秋田からお越しの東北森林管理局の方々8名。
まず、標高1270m付近に周囲50mの柵を設置します。支柱はFRP製で、岩手県自然保護課のものより軽いです。


足場の悪い沢沿いの道を進みます。


現場に到着。トンテンカンテン。


案ずるより産むが易し。1時間20分ほどで設置を終えました。皆さんは8月30日に早池峰山の北麓、門馬コース登山道下部でも柵を設置していたので、作業が効率化できていたのかもしれません。


ところで、沢の石の下にトワダカワゲラがいました。水質階級Ⅰ(きれいな水)。

この日、台風の接近にともなって、作業の途中から雨が降り出しました。明日は大丈夫かな。


9月5日。台風は夜半に日本海を北上し去ったものの、朝まで雨が残ったために河原の坊の沢が増水していて渡渉ができず、水が引くまで3時間待ちました。
この日は、秋田からの8人に岩手南部森林管理署遠野支署から8人が加わりました。また、岩手県立博物館の学芸員さんも同行しました。(先日、岩手県の柵設置には地元新聞社が取材に来ましたが、今日は来ませんでした。)
前日より標高の高い1400m付近に、周囲50mの柵を設置します。前回の記事で取り上げた、シカがナンブトウウチソウやミヤマヤマブキショウマなどを食べていた高山植物帯です。去年から柵を設置してほしいと言っていたいわば核心部。


滝のようになった沢沿いの道を進みます。


現場まで、最後の急登を登ります。


到着後さっそく場所を決め、杭を打ちます。これまでの場所よりも土の少ない岩場のため、杭が打ち込めるか心配していましたが、場所を選ぶと入りました。


支柱に沿ってネットを広げていきます。シカの通り道を囲って…


あいつらが入れないように、ずんずんと…


案ずるよりー(以下略)。日本でも数少ない(?未確認ですが)高山帯の岩場での防鹿柵が完成しました。

周囲50mはわずかな範囲ですが、この場所への設置は去年からの念願でした。柵を設置したのは東北森林管理局ですが、ここへの設置を提言できたのは、センサーカメラの画像によって食害をシカによるものと確認できたからです。それは今年、岩手県自然保護課が天然記念物への現状変更の許可を取ってシカ監視員さんがセンサーカメラを設置したからです。様々な関係者の取り組みが柵の設置という一つの結果に結びついたと言ってよいでしょう。これからも、関係者がコミュニケーションを密にし効率よく対策を講じてゆければよいと思います。


さて、私は柵設置の翌日薬師岳へ登りました。


振り返れば早池峰。


もしかして…?

180909_hayachine3.jpg
ゴゴゴ… (ここからは写真をクリックすると少し大きいサイズが開きます)

180909_main.jpg
あっ

180909_main1.jpg
あった!…なんか、達成感を感じた一瞬だった。

180909_net.jpg
と同時に、柵に比べてあまりに広大な早池峰山。(赤い点が柵…見えますか?)


今年は早池峰山の歴史上初めて、岩手県と東北森林管理局により防鹿柵が設置されました。来年も、希少植物を保護したり、すでに失われた植生の回復を図るための柵を局所的に設置する取り組みは期待できそうです。しかし早池峰地域全体へのシカの影響度は昨年よりも確実に進んでいます。シカの食害を防ぐためには、局所的な柵だけでなく、シカが早池峰山域へ侵入するのを防ぐ柵が必要だと思います。早池峰山のシカは積雪期には麓へ下がります。春に上らせない対策が必要なのです。ある程度の距離でシカを防ぐ柵が必要でしょう。また、捕獲もこれまで以上に進めなければならないでしょう。
シカ対策に関わる様々な関係者が協力して一つのグランドデザインを描き、それに沿って対策を進めて行くようになればと願っています。