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早いもので年の瀬を迎えました。
簡単に今年の早池峰山の人間界のまとめを書いて今年のブログを閉じたいと思います。

今年は何よりもまずコロナ禍により、夏の車両通行規制期間中のシャトルバスが運休となったことが大きな出来事でした。
例年であれば、6月第2日曜日から8月第1日曜日までの土・日・祝日には、早池峰山のメインの登山口を通る県道25号を時間車両通行止めとするのに合わせて登山者を運ぶシャトルバスを運行するところを、今年は、バスの車内が密になるために新型コロナウイルス感染対策として、バスを運休したのです。
そのため、登山者数は例年に比べて減少しました。数字で見てみましょう。

2019(令和元)年登山者数
全登山者数:14,059人 うちシャトルバス利用外登山者数:10,342人 シャトルバス利用登山者数:3,717人

2020(令和二)年登山者数(5月1日〜10月31日)
全登山者数:9,605人 (シャトルバス利用登山者数:0人)

と、いうわけで全体としては約32%減となりましたが、だいたいシャトルバス利用分がそっくり減ったような勘定です。
自家用車での登山者は感覚的にも減った感じはなく、GO TOトラベルが始まってからの10月に至っては前年比+50%でした(自然公園保護管理員調べ)。

規制期間中にシャトルバス運休を知らずに来て、規制区間の入り口で引き返した人、そこから車道を歩いて来て登山口で力尽きて帰った人などもいました。
また、規制のない期間には自家用車が集中し、河原の坊の駐車場の収容台数を超えて路上にあふれるという事態もたびたび起こりました。
このあたりは、もし来年もコロナ禍が続くのであれば、今年の状況を踏まえて対策を取る必要があります。

管理員として登山者の様子を見ていると、登山者はコロナでもアウトドアは大丈夫、それに岩手県は感染確認が全国一少なく(当時)安全だから、という感覚でいるように見えました。
早池峰山は日帰りできる山で宿泊小屋の休業という事態もなく、登山自体の禁止もなかったので来やすかったのかもしれません。
(それでも首都圏の知り合いで、本当は早池峰山に行きたいけれど感染拡大防止のため今年は登山を自粛するという方も何人もいました。)
登山中はみなさんマスクを外して歩きます。そしてそのままビジターセンターに入ってこられる方も2〜3割?はいました。
センターの入り口にはマスク着用での入館をお願いする掲示をしたり、手指消毒用の消毒液をおくなどの対策をしました。
登山中にすれ違うとき、多くの人が習慣で「こんにちは」と言ってすれ違うので、ちょっと怖かったですね。

来年はどうなるのでしょうか。誰もが不安に思いながらの年末です。
早池峰の神楽もコロナが拡がってからはまったく機会がなくなり、舞納めも舞初めもありません。
ただ、お山はあります。春が来れば雪が融け、また花も咲きます。
その姿を思い浮かべてお山に願う、そんな年末です。
みなさまよいお年を。


2020年5月3日 山頂直下にアマビエを描いた。雪が消えるまでは守られたか


2020年9月21日 車、路上までぎっしりの図
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あっというまに11月になってしまいました。

早池峰山は今年も岩手山の初冠雪と同じ10月17日には白くなっていました(気象台から目視できないため初冠雪という記録はなし)。
その後いったん雪は消え、25日からはまとまって雪が付き、27日にはよく晴れて遠くからもよく見えるようになりました。


2020年10月27日

小田越登山口・河原の坊駐車場に通じる県道25号は、11月11日午前11時から来年5月までの冬季通行止めに入ります。
その前に駆け込みで登山を考えている方は、もう駆け込まないで来春をお待ちください。明日から冬型が強まり北日本はだいぶ冷え込みます。

紅葉はもう里でも終わりを迎えようとしています。
今年、山(ここでは早池峰山登山道〜標高1000m付近まで)の紅葉はあまり綺麗ではありませんでした。紅葉の始まりは遅く、まとまりもなかったし、葉には茶色い斑点が入るなど見栄えが悪かったです。ただ、そのあと下の方ではわりあい綺麗になっていきました。
先月ポツリポツリと撮った紅葉を紹介します。


10月9日、小田越から河原坊への県道から。ミネカエデが染まっていてもダケカンバはまだなのでバラバラしています。


10月12日、やはり小田越に近い県道沿いで。ガスってます。


10月13日、うすゆき山荘で。


10月20日、河原坊で。これは紅葉というよりは夕日の色です。


さて…このあとは植物と動物に少しでも興味のある方はお読み下さい。興味のない方には退屈かもしれませんので。
すっかり時間が経ってしまいましたが、前回のナンブトウウチソウの続きです。
9月29日に、一合目でまだ程よく咲いていたナンブトウウチソウの株ですが、10月9日にもう一度確認すると、何割かの花穂が無くなっていました。


9月29日


10月9日、同じ場所。


花茎の先の方で無くなっているものはネズミが原因でしょうか。
ナンブトウウチソウの種子の状態から見ると、やはり花の盛りが少し過ぎて、しかし枯れすぎない時期に種子を食べに来ているようです。

枯れたナンブトウウチソウは種子だけが茎から外れて落ちたり、花穂ごと折れて下に落ちます。

種子が落ちた花穂。


さらに落ちるとこんなになります。


落ちた種子(左)と、花序ごと切れて落ちたもの。

これがナンブトウウチソウにとって通常の種子散布の形でしょう。
ここまで枯れないうちに花穂がなくなったものは、まれに強風によることもありますが、動物(ヒト含む)が原因と思われます。


花茎の中ほどから切れているものはシカかカモシカによるものと思われます。


実際、すぐそばにシカまたはカモシカの足跡がありました。一つは幼獣です。
この夏、小田越コース登山道周辺でカモシカの親子の姿がよく見られました。その親子のものかもしれません。(カモシカの親子は去年も見られ、NHK「さわやか自然百景」に撮影されました)

昨年のナンブトウウチソウの被害について、岩手県立博物館専門学芸員の鈴木まほろさんは、ネズミによるものとの報告をしています。

鈴木まほろ「早池峰山固有種ナンブトウウチソウの花序を食害するネズミ」

その中で、昨年の大規模な食害をハイマツ球果の不作と結びつける仮説を示しています。ネズミがハイマツの実を食べることは他の山で記録があるそうです。

一方、今年はハイマツはそれほど不作ではありませんでしたが、ナンブトウウチソウに一定程度の食痕は認められました。
私は、過去に早池峰山でのネズミに関する研究がないものかと、『平成12年度 早池峰地域自然環境調査報告書』を見てみました。すると、興味深い記述が見つかりました。

「ヒメネズミとアカネズミでは前者が低山帯から高山帯までの鬱閉した森林に生息するのに対し、後者が低山帯の開けた林を好むという。注目されるのは、亜高山帯や高山帯においても、道路工事等で森林を伐採した結果、開けた場所ができるとアカネズミが侵入してくるという事実である。」(時田・横山・向山. 2001. pp.290-291)
そして、
「鬱閉した森林を好むヒメネズミと、低山帯の明るい疎林を好むアカネズミの分布を調べてみると、ヒメネズミは低山帯から亜高山帯にまで広く分布しているが、アカネズミは低山帯を脱し、亜高山帯、特に登山者が多く道路も整備されている小田越コースの森林にまで進出していることが分かった。また、このアカネズミの進出傾向は、近年とみに激しくなっているのではないかということが、約20年前に同地を調査した関山の報告(1982)との比較検討から推察された。」(同、p.292)

(時田克夫・横山恵一・向山満. 6−1 哺乳類. 岩手県生活環境部/社団法人 東北地域環境計画研究会. 平成12年度 早池峰地域自然環境調査報告書. 2001, pp.290-292)

これを読んで私が思ったことは、近年のニホンジカの侵入によって、河原坊や小田越コース登山道の東側の沢などでシカの食害が進み、明るく開けた場所が増え、その結果アカネズミが増えているのではないか?ということです。もしシカの侵入によってアカネズミの個体数が増え、風が吹けば桶屋は儲かり、ナンブトウウチソウの食害が増えたのであれば、シカの侵入が続く限りこの事態は今後も続くのではないでしょうか。
ふわぁーい。誰か調べて下さいな。私にはお金がない。調査にはお金と権威、つまりお金が必要なのです。

先ほど書いたカモシカの出没にしても、ニホンジカの侵入によってカモシカが追いやられ登山道付近での出現と食餌が増えているのカモシれません。
近年の早池峰山での一番大きな環境の変化はニホンジカの侵入です。その影響の可能性については過小評価しない方がいいでしょう。
今年、早池峰山で行われたシカ対策についてはまた改めて記事にしたいと思います。


早池峰山では紅葉が見頃を迎えていますが、そういった情報は昨今みなヤマレコとかYAMAPなどの登山SNSでリアルタイムに得られると思いますのでそちらをどうぞ。

さて前回、今年はナンブトウウチソウにも目立った食害はないと書きましたが、その後状況に変化がありました。

9月29日に小田越コース一合目付近のナンブトウウチソウ群落を観察したところ、去年と同様かやや少ない程度で、ナンブトウウチソウの花が無くなっていました。
(以下、写真は記載のあるもの以外は2020年9月29日、早池峰山小田越コース一合目付近)


何本かの花穂が、花茎の途中から無くなっています。


少し分かりにくいですが、上の写真と同じ株の、9月7日の状態です。











手前左と中央は茎から切断されており、右は種子だけが無くなっています。
つまり…普通は右のように種子だけが落ちて茎は残るはずなのです。

昨年はセンサーカメラにナンブトウウチソウの花茎に登るネズミが写り、有力な犯人像と思われました。

今年は私が観察した限り、9月7日と9月29日の間に花穂が失われたことになりますが、その間のいつ、花(果実)がどんな状態の時に取られたのかが気になります。
未熟な果実の場合と熟した種子の場合では、原因動物にとってもナンブトウウチソウにとっても意味合いが異なると思われるからです。

動物にとって、未熟な実は生食するのに魅力的な食物であり、熟して乾燥した実は貯蔵用になります。
また、ナンブトウウチソウにとっては、未熟なまま食べられれば単なる被害ですが、もし完熟して発芽可能な状態の種子を貯蔵されるのであれば、それは種子散布の一形態と言えます。動物の食べ残しや糞から発芽して子孫を増やすことができるかもしれません。
ただ、見たところナンブトウウチソウは、普通は振動や雨などで自然に種子が落下して散布されるようなので、もともと動物散布を選んでいるようには見えません。原因動物がどの状態の実を取っているのかも明らかになっていません。花の状態を毎日観察してセンサーカメラで24時間監視すればすこしは謎に近づけるでしょうか。

(あれ?去年のふわふわお布団説は…?)



ふわふわ巣材説のためには原因動物と巣を見つけないと…

いずれにせよ、ナンブトウウチソウは多年草で株は残っているので、まだ無くなったりはしません。


昨年、ハヤチネウスユキソウに続いてやはり固有種のナンブトウウチソウの花穂が大量に失われるという事案が発生しました。
ほしがらす通信 2019.9.5 ふわふわマニア?

そしてナンブトウウチソウの前に仕掛けた自動撮影カメラに、ネズミが花穂に食いつく姿が写り、ネズミが原因の一つと考えられました。
ほしがらす通信 2019.10.4 ふわふわのその後

今年はどうなっているでしょうか。ナンブトウウチソウが花期を迎えたので、見に行ってみました。


小田越コース一合目の上のナンブトウウチソウ大群落。


去年はちょうどこのような雄しべのピンクが白く色あせて実がふくらんで来る頃に被害が多く発生しました。
完全に乾く前の実を食べるということは、貯蔵用ではなく生食用だったのでしょうか。


こちらは咲き始めたところ。
ともあれ、今年は目立った被害はないようです。


🐤 🐤 🐤 🐤 🐤 🐤 🐤 🐤 🐤 🐤

さて、お話変わって、8月の後半から小田越の樹林帯ではルリビタキの子育てが見られました。


ルリビタキの巣と卵 2020.8.14

ルリビタキは夏鳥として飛来し、早池峰山の標高1200mあたりから山頂稜線までの樹林で繁殖します。小田越の樹林帯では以前、7月後半にルリビタキの営巣を見たことがありました。今回はやや遅いのでシーズン中の2回目の営巣だったのかもしれません。


数日後には目も開かないヒナが口を開けて親を待つ姿が見られました。 2020.8.21


せっせと餌の昆虫を運ぶお父さん。 2020.8.21


また数日後にはだいぶヒナが育ってきて、今度はむやみに口を開けずにじっとしています。 2020.8.27
5羽はいたようです。


こちらはお母さん。この巣の餌運びの頻度はオスの方がずっと多いようでした。 2020.8.27


それから3日後には、もう巣は空になっていました。 2020.8.30

無事に巣立ったのならよいですが。巣立ち前にテンなど?に襲われる可能性もあります。


これは別の巣から巣立ったとみられるルリビタキの幼鳥です。(このときまだ観察中の巣にはヒナがいたからです) 2020.8.27


空になった巣を後に帰る途中、別のルリビタキが餌運びをしているのに出会いました。オスです。 2020.8.30


オスが餌を運んだ場所で見つけた巣にはヒナが4つ見えました。 2020.8.30


5日後、ヒナはだいぶ育ってきました。 2020.9.4


それから3日後にはもう空になっていました。 2020.9.7

無事に巣立ったかなあ。

二つの例から、ルリビタキの孵化から巣立ちまではだいたい10日〜15日ほどだと観察しました。
センサーカメラなどで24時間監視をしているわけではないので確実ではありません。

早池峰山・薬師岳の森は、わずかに聞こえるメボソムシクイのさえずりのほかは静かになって(ホシガラスはまだいます)、秋の気配を迎えています。
ニホンジカの繁殖コールも始まりました。
昨年の今頃、早池峰山のほぼ全域でハヤチネウスユキソウの頭花と苞葉が切断されて失われるという事件が起きました。

ほしがらす通信 2019.8.20  新たな脅威


その数は確認されただけでも700本を超えました。 2019年8月14日

被害の規模と時間的・空間的な拡がりから、なんらかの動物によるものと推測されました。

ほしがらす通信 2019.9.5 ふわふわマニア?

その後、被害はやはり固有種のナンブトウウチソウに拡がりました。


花穂の失われたナンブトウウチソウ 2019年9月14日

ナンブトウウチソウの前に仕掛けられた自動カメラにネズミが写り、こちらはネズミによるものとの可能性が指摘されました。

ほしがらす通信 2019.10.4 ふわふわのその後


そういうわけで今年はどうなっているのか気になっていましたが、今のところ同様の現象は起きていないようです。


2020年8月14日


2020年8月14日


去年、初めに目撃があった場所。とりあえず無事です。2020年8月14日


去年はこのような少し枯れかかった時期の花が多く切り取られたのですが、今年は無事です。
今後、やはり去年同様にナンブトウウチソウの花穂も被害を受けることがないか観察していきたいと思います。


さて、去年はハイマツの実がまったく不作でしたが、今年は豊作です。(写真はすべて2020年8月14日)


ハイマツの球果


ハイマツの実はホシガラスの好物。


今年はホシガラスがハイマツ帯で球果をついばむ姿がよく見られます。


こうしたホシガラスの食べ残しからまたハイマツが増えていくと言われています。


あとちょっと、夏の終わりの花を。(写真はすべて2020年8月14日)


タカネナデシコ


ナンブトラノオ


オヤマソバ


ミヤマアキノキリンソウ


キンロバイはだいぶ長く咲いていた。


ミヤマヤマブキショウマの実